非伝統が伝統になった時に起こること:ピーター・シフ

Euro Pacific Capitalのピーター・シフ氏が、Fox Businessのスタジオに凱旋した。
ジェローム・パウエルFRB議長が講演で利下げを示唆したことで、シフ氏の12月の予想が的中したためだ。


「私が12月にこれが最後の利上げで次は利下げになるとわかったのは、株式市場が12月に下落し、FRBがこの殺戮を止める手立ては利上げを除外することしかなかったからだ。」

いつもはプエルトリコの豪邸のスタジオからメディア出演するシフ氏だが、この日はFox Businessのスタジオでの出演となった。
終末博士の異名をとる同氏は概ね弱気予想を続けてきた。
米市場とは上げ局面の多い市場だから、当然のことにシフ氏の予想は外れがちだ。
しかし、しつこく弱気予想を続けることで、10年に1度ぐらいの頻度で的中する。
しかも、逆張りの的中だから大当たりとなる。
この日もまさに大当たりの日だったのだ。
終末博士の大当たりだけに、多くの投資家にとっては凶兆でもある。

シフ氏は米長期金利が低下を続けている点について指摘する。

債券市場が上昇し利回りが低下した理由は、次の景気後退期にFRBが利下げするとトレーダーが予想しているからだ。
それは正しい。
しかし、結果については間違っている。

シフ氏が予想するのはスタグフレーション(景気後退とインフレが共存する状況)だ。
インフレが高いためにFRBは利下げをしにくくなる。
シフ氏によれば、政府が計算するCPIより実際の経済で進んでいるインフレは高水準なのだという。
つまり、米国民はすでにインフレに苦痛を感じていると言いたいのだ。


終末博士は不幸の上にさらに不幸を積み上げる。
現在2.25-2.50%のFF金利誘導目標をゼロまで引き下げたからといって、景気後退を跳ね返すような効果があるとは考えにくい。
シフ氏は、結局はQE4が講じられることになると予想し、パウエル議長の発言を紹介した。
(リーマン)「危機後に講じた手段を『非伝統的』政策と呼ぶのをやめるべき時かもしれない」との言及だ。
ゼロ金利も量的緩和も常態化するとの連想を与える発言だった。

1回目にドル危機が起こらずインフレが昂進しなかった理由は、みんなそれが一時的なものと考えていたからだ。
これは危機対応策であり、FRBは金利を正常化し、バランスシートも縮小する、と。
しかし、市場は初めて理解し始めた。
これは恒久的なバランスシート拡大であり、債務の貨幣化であり、終わりは視野にない。
永遠にゼロ金利だ、と。

シフ氏によれば、これがドル安・インフレ昂進をもたらすのだ。

「私はこの事態をだいぶ前から準備してきた。
ドルを完全に手放し、外国株・外国債券・長年弱気相場にある金鉱株を保有している。」

シフ氏は、米市場が弱気相場入りし、ドル安となれば、ドル高に苦しめられてきた新興国市場が一息つくと予想する。
ゼロ金利とQEに戻れば、金が再び大きく上昇すると予想した。

シフ氏は最近、仮にマイナス金利になれば金が買われると予想している。
マイナス金利の現金よりゼロ金利の金の方が有利だからだ。
それと同じように、プラス金利のドルとゼロ金利の金ならドルを選ぶ人も、ゼロ金利のドルとゼロ金利の金なら少しは考えを変えるかもしれない。
(ただし、リーマン危機時には金が売られる局面もあったから早合点は禁物だ。)

そこで1つ疑問が湧く。
FRBがゼロ金利政策に回帰した時、ゼロ金利のドルとゼロ金利の円はどちらが好まれるだろう。
どちらも安全資産とは言い難いのかもしれないが、1つはっきりとした違いは、米国は資金の取り手であり、日本は資金の出し手であることだ。
石ころが買われる可能性があるなら、紙切れが買われる可能性も考えておいた方がいいかもしれない。


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