8月の米雇用統計は賃金インフレの圧力が弱まっていることを強く感じさせる内容だった。
ローレンス・サマーズ氏、リック・リーダー氏の反応を紹介しよう。
1日発表の8月の米雇用統計は
- 非農業部門雇用者数: +187千人(市場予想+170千人)
- 失業率: 3.8%(同3.5%)、前月比+0.3%ポイント
- 平均時給: 前月比+0.2%、前年同月比+4.3%
失業率こそ上昇したが、雇用者数は市場予想を上回る結果だった。
結果、平均時給も鈍化し、賃金インフレの鎮静化を示唆する内容と受け取られたようだ。
ソフトランディングは依然難しい:ローレンス・サマーズ
これまでインフレを警戒する発言が目立ったローレンス・サマーズ元財務長官もBloombergで、インフレ高止まりのリスクが軽減したと話している。
「これは良い数字だ。
経済はまだ強いように見える。」
サマーズ氏が指摘したのは
- 堅調な雇用拡大
- 労働時間の漸増
- 失業率は上昇したが、労働参加の表れ
- それにもかかわらず賃金は予想を下回った
労働市場が強いのに、賃金インフレが収まりつつあるとの指摘だ。
この数字で結論を出すのはまだ早いが、これらの数字は間違いなく好ましいものだ。
・・・
私は依然としてソフトランディングへの道のりはとても険しいと考えているが、これはそこへ向かう一歩だ。
利上げは終わりにすべき時:ブラックロック
ブラックロックのリック・リーダー氏もBloombergで、今回の雇用統計を良い数字と前向きに捉え、金融政策・投資へのインプリケーションを語っている。
FRBは(利上げを)終わりにすべきだ。
リーダー氏は今回の雇用統計なら9月の利上げはないとし、これ以上の金融引き締めは望ましくないと話した。
根拠は、労働者が労働市場に戻りつつあるように見えることだ。
同氏はこの一因を、低所得者層の利払い負担増大にあると推測した。
(金融政策とは不思議なものだ。
金融緩和になれば、資産効果を通して格差が拡大すると言われる。
金融引き締めになれば(金利収入の上がる富裕層と利払いの増える低所得層の間で)格差が拡大すると言われる。)
投資に関してリーダー氏は、米国債だけでなくクレジット、住宅ローン、証券化商品など広くフィクストインカム市場に目を向けるべきと話す。
金融引き締めが終わるなら金利低下やスプレッド縮小も見込みやすくなるという意味だろう。
「イールドカーブの短期側を選好している。・・・
でも今考えているのは、もう少し長めの方も考えていいだろうということだ。・・・
もう少し金利へのエクスポージャーを取っていいと思う。」
一方、イールドカーブの長期側については引き続き消極的な考えのようだ。
イールドカーブの長期側では、年金基金や生命保険会社でもない限り、長短逆転したイールドカーブではリスク・ヘッジにならない。
もしもインフレが上昇すれば、リスクにやられてしまう。
インフレが鎮静化すると見ていても、インフレ上昇リスクを無視はしない。
教科書どおりの対応だ。