ハワード・マークス

 

集中か分散か、選択と結果:ハワード・マークス

Oaktree Capitalのハワード・マークス氏が、高校の投資クラブのインタビューに一問一答で応じている。
生徒のレベルの高い質問にも驚くが、マークス氏がプロに対するのと同様の答を返しているところが新鮮だ。


分散投資についてですが、どんな時には集中投資すべきで、どんな時には分散投資すべきでしょうか。

Amador Valley高校 投資クラブの生徒エヴァン君がマークス氏に尋ねた。
高校生がもう集中・分散で悩むほど投資しているのか、それとも思考実験なのか。
いずれの場合でも高度で正しい問題意識だろう。

マークス氏はこのテーマについてどの「メモ」でも触れたことがないとコメントしている。
高校生から新鮮な質問を受け、マークス氏は新たなテーマに行き着いたのだ。
大投資家は、常にさまざまな人たちからのインプットで進化しているのかもしれない。
このテーマは今後の「メモ」で取り上げられるのではないか。

初めて語る答とあって、マークス氏はとても冗長な話を繰り返している。
それが数分続くと、同氏らしいファイナンス理論を絡めた秩序だった回答が始まった。
52年前シカゴ大学で学んだファイナンス理論について語り始めた。

「シカゴではちょうど、シカゴ学派の金融理論・投資理論と呼ぶものを教え始めた。
・・・
リスク回避というものがすべての知的な市場の土台になっているという。
リスク回避とは、単純に人々がお金を失いたがらず、持っているお金を維持することをさらなる儲けを最大化することより重要視することだ。」

リスク回避はポートフォリオ理論の根幹だ。
リスク/リターンのトレードオフは投資家がリスク回避的だからこそ起こることだ。
CAPMなどのリスク/リターンの関係式もまた、リスク回避的だからこそ成立する。


マークス氏の説明はさらに行動経済学の分野で有名なプロスペクト理論にも言及する。

「1,000ドルを失うとこんなに(たくさん)悲しみ、1,000ドル設けたときはこんな(ちょっと)しか喜ばない。
儲けに対する感情の量は通常損失に対する感情の量より少ない。
言い換えれば、ほとんどの人は儲けた時より損したことの方を大きく見る。」

では、本当に投資家はリスク回避的なのか。
マークス氏はシカゴ学派から学んだ根拠を説明する。

「みんなが分散しているという事実こそが、みんながリスク回避的であることを示している。
私はこれまで1人も1つだけの資産からなるポートフォリオを持つ人に会ったことがない。
例えば、株式市場の投資家はみんな一番のお気に入りの銘柄があるものだが、私はただ1銘柄だけを保有する人に出会ったことがない。」

多くの投資家はお気に入りの銘柄・資産クラスがあるだろうし、それに対して多くの知識を持ち、自信を持っているかもしれない。
しかし、それでも自分に予見できない何かが起こりうると思うから、その他の銘柄・資産クラスを入れて分散すると、マークス氏は解説する。

マークス氏は「あまり助けにはならないが」と前置きをしつつ質問への答を話す。

自分の判断に自信があるときはポートフォリオを集中すべきだ。
しかし、自分の判断に基づいて過度なリスクを取りたくない時、ポートフォリオを分散すべきだ。
だから、私たちは常に集中と分散のバランスをとらないといけない。

マークス氏が「あまり助けにはならないが」と話したのは、この答が常識的かつ抽象的と感じたからだろう。
ただし、ここで終わらないのがマークス氏だ。
こうした投資家の選択がどういった結末に結び付くかまで丁寧に説明している。

「あなたがリスク回避の傾向が強い投資家なら、分散に傾く可能性が高い。
リスク・テイカーは集中し、しばしば全財産を黒のマスに賭け、赤の目が出て破産する。
分散投資家は定義からして決して大きな損失を被ることはないが、大きな利益も得られない。」


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