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アスワス・ダモダラン 開示の厚みはバリュエーションと比例する:アスワス・ダモダラン
2021年7月20日

アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、Bloombergのインタビューに答えている。
密で深みのある内容なので、何回かに分けて教授の言葉を紹介しよう。


奇妙に聞こえるだろうが、開示資料が長くなればなるほど、会社についての見つけられたくないコトが入っている確率が高くなる。
会社は読まれないことを望んでいるんだ。
興味深いのは、浴びせかけるような情報開示がなされると、そうした400ページのようなデータの山に直面すると、投資家は読むのをやめてしまう。

ダモダラン教授がBloombergで、企業による情報開示について話している。
教授は先日、情報開示についてのブログ記事を公表しており、このコメントもそれに関連するもの。
ブログ記事は正統的かつタブーなく議論しており、その辛口ぶりは教授ならではのものだ。
Bloomberg出演でも、歯に衣を着せぬ語り口がいかんなく発揮されている。

キャスターから、開示資料の形式を考慮する投資アルゴリズムは可能かと尋ねられ、ダモダラン教授は「悪いアイデアではない」と答えている。
普通の人なら「良いアイデアだ」と少し持ち上げるところだが、教授には無縁だ。
1つには生来の辛口だからだが、もう1つびっくりする理由があった。
教授ははるか昔に可能性を思いつき、検証までしていたのだ。

成長・リスク・キャッシュフローでスクリーニングするのに加え、10Kのページ数でスクリーニングすべきだ。
ふざけたように聞こえるかもしれないが、私は15年前に実際に研究したところ、10Kが100ページ増えるごとにPBRが0.3低下することがわかった。
何が起こっているのかというと、10Kが部厚くなることは、その会社が複雑であることを示し、複雑な企業ははるかに評価や投資が難しくなるということだ。

開示資料の量の増加が、企業の理解しにくさの指標になりうるとの見方だ。
100ページあたりという大きな差に対するものとしても、PBRで0.3とはかなりの影響度だ。
その源泉が、コングロマリット・ディスカウントに似たディスカウントであると解釈しているのだ。

企業の情報開示は、コーポレート・ガバナンスを支える重要な柱だ。
最近流行のESGの「G」でもある。
そもそもダモダラン教授がESG(あるいは、そこに潜む欺瞞)に否定的なのは周知の事実。
関連業者ばかりが潤い、企業の振る舞いは一向に改善しないと話す。

過去20年で開示が大きく増えた分野はコーポレート・ガバナンスだ。
サーベインス・オクスレー法が大量のコーポレート・ガバナンスの開示を生み出したのが2000年代初めだ。
問題なのは、株主が20年前と比べて企業に対し力を有していると感じているかということだが、そうは感じていない。

サーベインス・オクスレー法は2002年、エンロンやワールドコム等の不正会計への反省から、企業会計の信頼性向上・投資家保護を目的に制定された。
かつては隠すことで投資家をないがしろにしてきた発行体は、この法律によって隠すことが難しくなった。
しかし、発行体は代わりにあからさまに投資家の権利を制限するよう調達構造を変更し、大量の開示資料を浴びせかけることで煙に巻こうとしている。

その開示義務が課された後、企業は複数の種類株式、議決権制限株式を導入したからだ。
私は、現在のコーポレート・ガバナンスは最悪だと思っているが、彼らはそれをすべて開示し、誰も読まないことを望んでいるんだ。


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