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長期金利ゼロの市場・経済上の意味:レイ・ダリオ
2020年3月17日

ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が、長期金利がゼロになることの意味について書いている。


これは、経済に有害な多くの影響を及ぼす深刻な伝染病だが、私が恐れるのはそれだけではない。
長期金利が0%の底に行き着いたことと合わせて考えると、本当に恐ろしいのだ。

ダリオ氏が自身のSNSで、コロナ・ショックの脅威について書いている。
米国までもゼロ金利に行き着いたということは、日米欧の中央銀行が利下げという弾薬をほぼ使い果たしたことを意味する。
ダリオ氏は、財政政策が必要と考えるが、一方で社会・政治の分断が進んでいる。
国内外でコンセンサスをとるのが難しくなっている。
ダリオ氏は、各国ごとの状況をコンパクトに紹介し、事態の難しさを説明している。

これが、同氏の論文の骨子なのだが、ある意味オーソドックスな内容だ。
むしろ、ゼロ金利について突き詰めて考えたところが興味深いので、いくつか紹介しよう。
まずは、長期金利がゼロになる意味:

長期金利が固い0%の底を打っているということは、実質的にすべての資産クラスが下がることを意味する。
金利低下のプラス効果が存在しなくなる(少なくとも多くなくなる)ことを意味するからだ。
0%の底を打つことのもう1つの意味は、実質的にすべての準備通貨国の中央銀行の金利による刺激ツール(・・・)が効かなくなるということだ。

金利低下局面、資産価格は金利低下による上昇圧力を受ける。
その追い風は今後望めなくなる。

次に、ダリオ氏の量的緩和評とも言える部分:

通貨発行とともに現在中央銀行が買うことを許されている債務資産を買い入れても、たいして効かない。
(なぜなら、債券はそれほど上昇する余地がないし、それを売って財務的困難にある発行体の他の資産を買うとは考えにくいからだ。)

ダリオ氏には、量的緩和を論じる上で、はなからマネタリーベースの量についての関心はないようだ。
さらに、それがもたらす心理的要因についても何も触れていない。
このように聴衆が賢くなってしまうと、中央銀行がどんなにブラフを入れても市場は反応しなくなってしまうのだろう。

さらに、固い0%の底で、実質金利は上昇する可能性が高い。
原油ほかのコモディティ価格下落、経済の軟化、信用問題によって、ディスインフレやデフレが起こるだろうからだ。

この部分は、やや驚きがあるところだ。
ダリオ氏は最近「現金はゴミ」と言い切り、準備通貨の多くが価値を下げると予想していた。
ここで想定していたのは明らかにインフレ的な停滞だった。
しかし、今ではデフレ的な停滞を予想している。

これはブリッジウォーターの運用成績にも現れている。
同社のPure Alpha Fund IIは年初来20%程度下落したと伝えられている。
ダリオ氏自身、最近まで比較的強気な見方を続けていたため、リスク軽減をせずに来たようだ。
ブリッジウォーターはリーマン危機の2008年もプラスのリターンを続けたNo.1ヘッジ・ファンド。
メディアはダリオ氏の敗北といったトーンで伝えているが、たった3か月で判断するのも酷だろう。
今回の停滞が本当にデフレ的なものだけで終わるのか、その後にインフレ的なものに転嫁するのか、腰を据えて見定めるべきだ。

さて、短期的にはダリオ氏もデフレ的な停滞になることを認めている。
そこで起こるのはこんなことだ。

これらが典型的な起こり方をすれば、信用度の低い発行体の債務返済負担が信用スプレッド拡大によって重くなり、同時に、信用貸出が縮小し、結果、信用収縮・デフレ圧力・成長阻害要因を強めてしまう。
こういう状態の国々には神様が助けの手を差し伸べ、通貨も高くなる。

ダリオ氏は主要な経済主体ごとに次のアクションを予想しているという。

  • 年金・保険: 支払いのために資産を売却する。
  • 産油国・石油会社: 支出削減と資産売却。

といった感じだ。
そして、経済・市場へのインパクトを推定し、安心していいような悪いような予想を述べている。

私が考えているのは、発生する金融の混乱はほんの小さなパーセンテージにすぎないということだ。
忘れてはいけないのは、ほとんどの投資家・企業はレバレッジ(借金で資金調達)をかけてロング(値上がりを願って資産を保有)していること。
だから、今見ている資産価格の下落は、レバレッジのかかっていない価格下落よりもより大きな金融上の影響を及ぼす。


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