国内経済 投資

長期的な円高再開がありうるワケ:佐々木融氏
2021年6月2日

JPモルガンの佐々木融氏が、足元の円安ドル高の要因を一時的なものとし、今後円高に転じる可能性を論じている。


通常、世界経済が回復に向かい、投資家のリスクセンチメントが改善するという、リスクオンの時に円は弱い通貨となる。
従って、現状のような環境で円が弱い通貨となること自体に、さほど違和感がない。
だが、詳細を見ると、年初来の弱さは一時的な特殊要因による可能性が高く、むしろファンダメンタルズからは、長期的な円高再開リスクを警戒する必要があるように思える。

佐々木氏がReutersへの寄稿で、円高再開の可能性に注意するよう促している。
中身の濃い面白いコラムなので、原典を読まれることをお奨めしたい。

近時、ドルと円は《目くそ鼻くそ》の競争を続けている。
ドル安+円安となる中、円安の方が強いために円安ドル高となっている。
一方、市場(特に米市場)はまだリスク・オンと言えようから、素人目にはいつもの《リスク・オンの円安》と見えなくもない。
低金利通貨である円でドルを買い、米10年債を買えば、良い利回りが得られる、といった具合だ。
佐々木氏は、日米の短期金利差が小さいことから、この要因がさほど大きくないと示唆している。

「米10年国債の金利水準は日本の投資家にとって魅力的だが、わざわざドルを買って米国債を買わなくても、低い米国の短期金利を支払ってドルを借りて米長期債に投資すれば、リターンは短期金利分だけ少なくなるが、為替リスクを避けられることからより魅力的となる。」

為替リスクをともなう円キャリー取引などしなくても、米イールドカーブ内でのロング・ショートで事はすむというわけだ。
かわりに佐々木氏は、円安の背景として3つのことを挙げているが、それは原典に任せよう。
ここでは佐々木氏が円高再来を警戒する理由に移りたい。

「今回、日本はいつの間にか世界からかなり遅れをとった国になっていることが世界に対して明らかになってしまった。
(コロナ前から気がついていた人も、多かったのかもしれないが)。
世界の実質国内総生産(GDP)は既にコロナ禍前の水準を回復しているが、日本はまだ回復できていない。
これもGFC後と同じ現象だ。」

佐々木氏が円高再来の可能性があると考える理由は、なんと日本の体たらくにある。
米国の経常赤字、日本の経常黒字は、円高ドル安要因となる。
(ついでに、米国のインフレ、日本のディスインフレも円高ドル安要因だ。)
日本に元気がないから、この円高ドル安要因を跳ね返せない可能性があるというのだ。

日本が元気で経済に活力がある時には、そうした実需のドル売り/円買いを跳ね返すだけの対外投資フローが発生し、ドル/円相場を円安方向に押し上げる。
一方、日本に元気がなく、経済の活力が失われてくると、跳ね返すだけのリスクも取れず、実需のドル売り/円買いに押されるがままに円高になる。

日本経済が相対的に弱くなってきた時に円は強くなるのが過去の経験則であり、それは経常黒字国・対外純債権国の宿命なのかもしれない。

世界的に見れば、経済再開が始まっており、今はリスク・オンといえるだろう。
しかし、日本に限っていえば、リスク・オフの雰囲気もある。
その意味では、仮にリスク・オフの円高となっても印象としては違和感はないかもしれない。
日本がリスク・オフだから日本人が円をアウトライトで売り切ろうというブームになるよりははるかにましなのかもしれない。


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