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金融資産には本質的な価値はない:レイ・ダリオ
2021年11月13日

ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が、関係する新著発売を控え、投資家にあらためて富の定義を問い直している。


ある人たちは、保有資産の価格が上昇するのを見て、裕福になっていると勘違いしている。
彼らは購買力が侵食されているのを見ていない。

ダリオ氏が自身のSNSで、昨今の資産高が一概に喜べないと書いている。

貨幣増発による民間への給付が消費者や生産者物価のインフレを生み出し、資産インフレを生み出している。
後者だけを喜ぶことは長い目で見て賢明でないとの指摘だ。
もちろん、足元でCPIが5%台の上昇をしても、たとえば米国株はそれをアウトパフォームしている。
現時点でドルの購買力低下が資産の名目価格上昇を打ち消して余りある状況ではない。
ダリオ氏が見ているのは、現在の瞬間風速の話ではないのだろう。
同氏は今後もインフレの基調が高まり、長い目で見て現状の資産価格上昇がインフレに負けてしまう可能性を見ているのだ。
ダリオ氏が「ゴミ」と言い続けてきた現金こそその際たるものであり、今回も現金保有者の傷が最も深いと書いている。

ダリオ氏は近年、過去500年の事例研究の結果を発表してきた。
FPでも『変わりゆく世界秩序』(仮訳)というキーワードで同研究について紹介してきた。
この研究は『Principles for Dealing with the Changing World Order: Why Nations Succeed and Fail Hardcover』とのタイトルで今月30日に発売される。
今回のSNS記事はその一部分を引用し、富に関する4つの関係式を肝に銘じるよう促している:

富 = 購買力

ダリオ氏は富の定義を保有するお金や信用とはしない。
これらはインフレにより価値が低下し、富の尺度とはなりえないからだ。
同氏は、富を購買力と定義する。
モノやサービスをどれだけ買えるかこそが富の尺度という考えだ。

富 ≠ 金融資産

ダリオ氏にとっての真の富とは「家・車・ストリーミングビデオなど、保有し使いたいために人々が買うもの」だという。
一方、金融資産とはそうしたモノ・サービスではなく、リターンを得たり将来のため蓄えたりするためのものだ。

金融資産には本質的な価値はない。
現在、実際の富に変えられるよりはるかに多い金融資産が存在し、よって、金融資産は価値を下げざるをえない。

ダリオ氏は現状が、富 < 金融資産 になっていると指摘してきた。
これは、金融経済が実体経済を凌駕しているとの見方と擦りあう。
富との引換券のはずの金融資産が富より多いのだから、引換券の価値が下がると言っているのだ。

富を生む = 生産性が高い

ダリオ氏は、長期的に見て、富(=購買力)はどれだけ生産するかによって決まると言い続けてきた。

金持ちの富を収奪し、それに寄生し、生産的でなかった社会(例えば1917年の革命後のロシア)を見れば、貧しくなるまでにそう時間がかからなかったことがわかる。

ダリオ氏は、生産性を上げる政策として、投資やインフラの支出を上げる。
逆に貨幣増発+給付では、生産性を上げないような内容なら富を生み出さないと指摘する。

ダリオ氏はパンデミック前から経済政策の局面を予想し、同氏がMP3と呼ぶMMT的な政策の実現を予想していた。
それゆえに同氏がMMTに前向きとの捉え方をされることがあった。
しかし、その後の発信から見てきたのは、ダリオ氏の予想が、価値観を含めない純粋な予想であったということだ。
そうなるだろうと予想するが、決してそれを望んではいないという意思を明確にしてきている。
とりわけ(以前からの持論である人的資本への投資なども含め)お金の使い方が成否を分けると繰り返してきた。

富を失う = 力を失う

ダリオ氏は、購買力を失うことが個人だろうと帝国だろうと没落をもたらすと指摘する。

歴史的に見て、個人・組織・国家・帝国が所得以上に支出すると、窮乏と混乱が待っているものだ。
また、自立ができている人の割合が大きい国ほど、社会的・政治的・経済的により安定する傾向がある。

ダリオ氏は、現在の覇権国家、帝国である米国の凋落を心配している。
そのため、生産性を高め、使うより多く稼ぐ経済主体にならないといけないと説いている。

ダリオ氏の投資家に対するアドバイスはこうだ:

今のように金融資産が上昇している時には、あなたの購買力が低下しているなら、本当の富を得ていると考えてはいけない。


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