【輪郭】金融検査マニュアル封印が暗示する未来

Share

森信親 金融庁長官が金融庁を処分庁から育生庁へ進化させようと頑張っている。
そのため1999年制定の「金融検査マニュアル」を封印するということだが、このニュースに危うさを感じたのは筆者だけだろうか。(浜町SCI)


9日の日経新聞に「金融庁『強権』を封印」という記事が載っていた。
日経ならではのチョウチン記事なのだが、いくつか考えさせられるところがあった。

失礼ながら、森長官はすぐれた官僚、リーダー、政策策定者であると思う。
それは日頃の言動から明らかだ。
だから、森長官の意図するところは痛いほど理解できる。
進もうとしている方向にも一理ある。
さらに、政府全体の経済政策がなかなかはっきりとした結果を出せない中、政権からのプレッシャーも大きいのであろう。
それを理解した上で、目標を達成するためのタクティクスとして、今回報道された話にはクエスチョン・マークがつく。


マニュアル廃止では何も変わらない

まず、象徴的な措置としての「金融検査マニュアル」の封印。
ほとんど実効性はなかろう。
1999年に同マニュアルが制定された時、各銀行はそれに準拠する形で独自の検査マニュアルを策定することを求められた。
今回、金融庁が「金融検査マニュアル」を封印したからといって、各行のマニュアルが大きく変更されるとは考えにくい。
あるいは、そうあってほしい。

「金融検査マニュアル」や検査官による債権分類は確かに画一的で厳格すぎることがある。
しかし、それこそ金融検査の役割だ。
そもそも、信用リスク管理に関する識見では銀行にいる融資のプロと検査官では雲泥の差がある。
現場に即したルール・法律・理論の実践という点で、検査官が銀行のプロに勝てるはずがない。
与えられた職務が違うのだから当たり前だ。

(次ページ: 驕った新銀行の思い出)

Share