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金融政策は定数ではない:ローレンス・サマーズ
2021年6月14日

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)は、足元の高インフレの一部が居座る可能性を指摘し、金融緩和が効きすぎないよう注意すべきと話している。


経済のリスクが過熱にある、コロナウィルスが終わっていない、という問題の証拠がさらに出てきた。
財政政策が全開、金融政策が全開、消費者が戻ってきつつある。
これらをすべて組み合わせるのは不可能で、問題に発展する。
それに早く気付くほど結果はよくなる。

サマーズ氏がBloombergで、インフレ・リスクを無視すべきでないと主張を続けている。

サマーズ氏は、インフレ昂進の確率がざっくり1/3ほどあり、これを無視すべきでないと主張してきた。
同氏はそれまでハト派と目されてきたが、今では他のハト派の批判の的になっている。
それでも同氏の心は折れていないようだ。
むしろ、足元のインフレが高水準にあるため、金融政策の効きすぎを心配している。

金融政策は定数ではない。
インフレが上昇して実質金利が低下すると、金融政策はさらに緩和する。
だから、今年を通して経済がブームになるにもかかわらず、金融政策は継続的に緩和の度合いを強めていく。

金融政策とは、実質金利を実質中立金利より低くすることで信用創造を後押しする営みだ。
実質中立金利は潜在成長率に依存し、趨勢的な変化を及ぼすイベントでもない限り、短期でそう動くものではない。
だから、実質金利を上下させることが金融政策の主要な手段になる。
実質金利を下げるには名目金利を下げるのが一法だが、いまはゼロ金利・超低金利だ。
そこでインフレ率が効いてくる。
期待インフレ率が拡大すれば、名目金利が一定でも実質金利は下がる。
金融政策を据え置いても、実はインフレ上昇期では金融緩和が拡大していることになるわけだ。
かつてのFRBには、将来を見て金融政策が効きすぎないよう配慮しようというところがあった。
しかし、今のFRBは実績値を見て政策変更を検討しようというスタンスに変わっている。

サマーズ氏の議論は周到だ。

「一時的なインフレ(要因)もある。
コアCPIによると前月のインフレは年率換算10%だ。
この大部分は一時的なものだ。・・・
しかし、一時的インフレ要因があるから全体のインフレも一時的と混同し、心配することはないとするのは基本的な誤りだ。」

サマーズ氏は労働力不足、住宅価格高騰など、今後インフレに転嫁されうる要因を挙げ、インフレが一時的と言い切る議論には無理があると話す。
企業の購買担当者、家計の動向を見る限り、少なくとも何らかの変化が起こっている点を認めるべきという。

(インフレを)一時的と考える人たちは自問すべきだ:
今四半期(年率換算)10%の成長、来四半期も10%成長と予想し、失業率の劇的な低下または労働力不足拡大を予想するなら、これらすべてのことが起こって、それがインフレを押し下げるプロセスの一部になるだろうか。
私はそうは思わない。

無理のないまっとうな議論であるが、サマーズ氏にも1つ弱みがあった。
それは、債券市場が金利低下の反応を見せていることだ。
金利低下はディスインフレを連想させる。
(期待インフレは5月中旬頃から低下傾向だ。)
経済学者の中でも特に市場との対話を重視する同氏にとって、市場のこの反応は意外だったようだ。
論敵への当てこすりを織り交ぜながら、率直に語っている。

この議論に参加している他の多くの人とは異なり、予期しないことが起こり驚いた時に、私は自分の考えをどう変更すべきかを考える。
彼らがインフレの数字を予期していなかったように、私も最近の名目利回り低下を予期していなかった。
これについて考えているところだ。


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