金融政策は国境を越えて波及する:ラグラム・ラジャン

RBI(インドの中央銀行)総裁も務めたラグラム・ラジャン シカゴ大学教授が、ペンシルベニア大学ウォートン校に招かれジェレミー・シーゲル教授らと対談を行った。
金融政策が通貨安誘導と見られるようになっている点について心配している。


この日が来るのを恐れていたんだ。
金融政策の1つの効果は、国境を越えて波及することだからだ。

トランプ米大統領がドラギECB総裁の金融緩和を為替介入と非難している点を尋ねられ、ラジャン教授が感慨を述べたとウォートン校サイトが伝えている。

トランプ大統領によるECB批判とは先月18日の2つのツイートだ。

「マリオ・ドラギが追加緩和を示唆し、すぐにユーロが対ドルで下落した。
これでユーロ圏は米国との競争上不当に有利になる。
中国や他の国々とともにユーロ圏はこれを長年続けてきた。」

「欧州市場は、今日マリオ・ドラギが語った(対米国で不当な)コメントにより上昇した。」

これまで国際社会では通貨売買による為替介入を原則アウトとしてきた。
一方、金融政策とは国内政策であるとし、金融緩和による通貨安については大目に見てきた経緯がある。
トランプ大統領はそうした伝統に縛られるつもりはないようだ。

ラジャン教授は、これまで金融緩和の他国へのスピルオーバー効果が大目に見られてきた理由を解説する。

「米国が利下げをして、ドル安になったとする。
米金利低下の1つの効果は、米経済が強くなるのを願うことだろう。
米経済が強くなるにしたがい(米国の)外国からの輸入を牽引し、世界各国にとって良いことになる。」


こうした面があるからこそ、リーマン危機後の世界金融危機の時には、比較的傷の浅かった日本が我慢する役を負わされた。
欧米経済が回復すれば、日本経済にとっても大きなプラスだったからだ。
そして欧米にそこそこの回復が見られた時、順番が日本に回ってきた。
それまで我慢し出遅れてきた分、日本が金融緩和とそれに後押しされた円安によって浮かび上がる番だったのだ。
この順番待ちでは我慢する側に痛みが走る。

ラジャン教授は、金融緩和が世界にとってプラスになるのには時間がかかると説明する。

「金融緩和の即時のインパクトとはドル安であり、米国の世界各国からの輸入をある程度減らすことになろう。
だから、金融緩和とは世界各国に逆効果を及ぼす傾向がある。」

順番待ちをする側は、輸出が減り輸出価格も下押しされかねない。
こうした不満が、通貨売買による為替介入だけでなく、金融緩和にも向けられている。
もっとも、ラジャン教授はトランプ大統領の肩を持つ気もないようだ。
大統領が批判する中国の為替操作について誤認と話している。

もっとも、輸出入を決めるのは為替レートだけではない。
米国の場合、そもそも他国と競争できる輸出産業がどれだけ残っているのかという疑問もある。
この議論はより典型的な輸出国に照らしてみる方が現実味があるのだろう。

ラジャン教授は金融政策の抱える潜在的な論争のタネを指摘する。

これが金融政策の抱えるジレンマだ。
通常の時には概して金融緩和はその国と世界各国にとって良いことだ。
しかし、利下げが他国に対する有利さを盗み取るためと見える時代もあるんだ。


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