国内経済

金融政策が助長する「低賃金と消費停滞の悪循環」:野口悠紀雄氏
2019年4月5日

早稲田大学ファイナンス総合研究所の野口悠紀雄氏は、金融政策が賃金上昇の妨げとなりうると主張している。
以前、野口氏はアベノミクスによって日本経済が二重構造を復活させたと書いているが、今回は異次元緩和が経済の停滞の一因になっていると指摘している。


アベノミクスによって『経済の好循環が生じている』と言われることがあるが、実際に起きているのは、まったく逆のことである。
低賃金と消費停滞の悪循環が生じているのだ。

野口氏がダイヤモンド・オンラインに書いている。
今回、同氏が注目したのは小売業と飲食サービス業など、他と比べて低賃金の産業だ。

この2つの産業では過去6年間で人員数が約1割減っている。
売上については小売が約1割減、飲食サービスが約1割増だ。
飲食サービスは全体では売上が伸びているものの大手に偏っており、資本金20百万円未満に限ると6%減になるという。
つまり、小売と零細飲食が売上・人員を減らしているのだ。
野口氏の解釈はこうだ。

「非製造業、なかでも小売業や飲食サービス業で減量経営の必要性が著しく、それが低賃金労働の供給源になっている。」

こうした業種から放出された低賃金の労働者が他の産業に供給されたとし「低賃金と消費停滞の悪循環」が生じたという。
悪循環とは:

売り上げ減 → 低賃金労働の供給 → 平均賃金低迷 → 消費停滞

モノが売れないから人員が減り、低賃金の労働者が供給され、平均賃金が停滞し、モノが売れない状態が続く。

GDPに占める家計最終消費支出の割合は2017年で53.9%に昇る。
民間住宅を足すと57.0%だ。
(輸出は17.9%。)
賃金が上がらないと経済が良くならないのは当たり前だ。

野口氏は今回「低賃金と消費停滞の悪循環」に「日本銀行の金融政策も影を落としている」と分析している。

日本銀行は、物価上昇率を高めることを政策目標にしている。しかし、これは、経済に対して抑圧的に働くことに注意が必要だ。
名目賃金が抑えられている状況では、物価上昇は実質賃金の伸びを低下させ、それによって消費の伸びが低下する。

賃金上昇の期待が高まらない中で物価上昇を望めば、家計は防衛に走らざるを得ない。
何をやればいいのか。
財布の紐をきつくするのだ。
モノの値段が2%上がるなら、買う量を2%減らすか、使用する期間を2%伸ばせばいい。
家計の合理的な行動は、経済成長を阻害する。
仮にモノの値段が2%上がり、販売量が2%減るなら、名目GDPには中立、実質GDPはマイナス2%となる。

日銀は2%物価目標を掲げているが、幸か不幸か達成の見込みがない。
しかし、実際に多くのモノの値段が上昇している。
その一因は、金融緩和が円安要因となり、輸入物価が上昇しているからだ。
これもまた非製造業に多くデメリットをもたらす。

野口氏は警告する。

非製造業の利益増加率が製造業より低くなるのは、総原価の伸び率が高いからだ。
これは、原材料価格高騰の影響と考えられる。
原材料価格上昇はとりわけ飲食業において顕著に生じており、それがこの業種での人員削減の大きな原因となっていると考えられるのである。
この意味で、物価上昇は悪循環を加速させる。


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