海外経済

金融指標は黄信号:ローレンス・サマーズ
2019年1月11日

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が、景気後退リスクの高まりを警告した。
景気後退入りすれば残された政策手段は少なく、FRBは利上げを継続すべきでないと話した。


金融指標が、赤信号ではないにしても、黄信号で点滅を初めた。
長短逆転したイールド・カーブ、株価は大幅下落し、クレジット・スプレッドは拡大している。

サマーズ氏がBloombergで、景気後退が近づきつつあると警告している。
同氏は従前から、米経済が2年以内に景気後退入りする確率を半々と言ってきた。
この予想には多くの根拠があるとし、5点を列挙した。

  • 通常の景気拡大期の年に景気後退に入る確率は1/3超
  • イールド・カーブ逆転、株価下落、クレジット・スプレッド拡大
  • 国外、特に中国での経済減速
  • 地政学的な不確実性
  • 昨年の財政拡大の反動と金融環境の引き締まり

サマーズ氏は、中国経済に対する心配を募らせる。
過去10-20年でなかった難しい時期にあるとコメントした。

米市場関係者は複雑な状況に置かれている。
昨年秋からの市場の混乱は米長期金利上昇に対する心配が火をつけたものだ。
それが、ここに来て長期金利は予想外の低下を見せた。
しかし、市場関係者の心配は去ったわけではない。
長期金利の低下は、米経済の鈍化を暗示するものと受け取れるからだ。
どちらに言っても安心できない。
ゴルディロックスと逆のことが米市場で起こり始めている。

長期金利が下がれば、市場はイールド・カーブの長短逆転を心配する。
サマーズ氏は、イールド・カーブの1-3年の部分のフラット化に注目しているという。
この部分は、今後数年のFRB利上げに対する市場予想を織り込んだ形状になるからだ。

「ある期間でFRBが引き締めより緩和する可能性の方が高いと市場が見れば、市場とは往々にして間違えるものだが、そうした見方を打ち消したくはない。
平均で言えば、市場は多くの人の意見の集約であり、私の経験から言えば、それを否定するのは間違いになる。」

ここの論点は2点あろう。
1つ目は、FRBとは果たして市場より常に優秀なのかどうか。
市場の方が経済の実勢を正しく反映しているなら、それを否定するのは金融政策を間違えることになる。
もう1つは資産価格への影響だ。
イールド・カーブより金融を引き締めれば、資産価格は割引率を引き上げられて下落してしまう。
これは従前からレイ・ダリオ氏が指摘してきたことだ。

「今すべきなのは、景気後退を仮定することではなく、景気後退のリスクに対し十分留意することだ。
つまり、いかなる政策においても緊縮的な政策を取らないことだ。
分別のある予防薬が望まれ、新たな保護主義ではなく、環境に新たな不確実性を生まないことだ。」

FRBの金融政策については、利上げを継続する根拠はないと指摘した。
2%の物価目標は上下対称の目標であり、現状はその中心を下回っているからだ。
その上で、労働市場がタイトでもすぐにインフレが上がると予想すべきでないと示唆した。

「FRBはある期間2%以上のインフレを許容するということをもっと強く打ち出すべきだ。
フィリップス曲線理論ではなく、実際のインフレの数字を見ると示すべきなんだ。」


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