金融庁長官が示す3つの金融危機シナリオ

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金融庁の森信親長官が地域金融機関経営者に対してビジネス・モデル見直しを求めている。
長官の示す3つの危機シナリオからは、追い込まれた金融機関の窮状が見て取れる。


「余力のあるうちに将来に向けて持続可能なビジネスモデルを作っていただきたい。」

森長官が地域金融機関の会合でこう話したとReutersが伝えている。
長期にわたる超低金利政策が金融機関の事業モデルを破壊している。
短期が-0.1%、長期がゼロにペッグされている中で、銀行のやれることはどんどん小さくなる。
銀行とは短期の預金で調達し、短プラ(またはTIBOR)にいくらか載せて運用する商売だ。
短期金利が水面下にあり、かつ預金金利がマイナスにならないとなると、これまでの本業では儲からない。
米国のように、上乗せ金利が数%でも稼げれば、貸出金利も大きくプラスとなり儲かるのだが、日本の上乗せ金利は小さい。
かろうじて出来上がりの金利が水面上に出るような具合だ。
そんな中、金利が上昇を始めたらどうなるか。

金利上昇による3つの危機シナリオ

こうした惨状を理解し、森長官は地域金融機関に大胆なビジネス・モデル模索を求めている。
その是非は別として、森長官がこの問題に対して正しい認識・危機感を持つ、政府内で稀有な人物であるのは確かだ。
この認識・危機感を政府・日銀が本当に共有できているのかと心配になる。
森長官は3つの危機シナリオを話したという。

「1つ目は、金利上昇により調達コストが上昇する一方、全体としての預貸率が低い中で金利競争が続くことにより、貸出金利がさほど上昇せず、貸付スプレッドがさほど改善しないというシナリオ。

2つ目は、現在の低金利下でとった金利リスク、たとえば超長期の国債投資によるものなどが顕在化し、有価証券の含み損が発生、あるいは拡大し、さらにキャリー(イールドカーブを固定した場合に得られるリターン)がマイナスになるシナリオ。

3つ目は、金利上昇により信用コストが上昇するリスク、特に長年続いたゼロ金利の下で本来の信用リスクをカバーできない低金利での貸付が赤字化するシナリオ。」

まさに、追い込まれた金融界の苦悩を言い当てている。

(次ページ: 金利が上昇しない危機シナリオ)