金融危機は意外に早く来るかもしれない:ケネス・ロゴフ

元IMFチーフ・エコノミスト ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授が、意外に早い金融危機の再来を警告している。
その理由は、金融ではなく政治だ。


不幸なことに、容赦なく拡大する金融システムと、有害性を増す政治環境を合わせて考えると、次の大きな金融危機はあなたが考えているより早く来るかもしれない。

ロゴフ教授がProject Syndicateで不吉な予想をしている。
かつて『国家は破綻する』の著書で国家債務に警鐘を鳴らした教授ではあるが、今回の心配の対象は国家の債務ばかりではない。
ソブリン・リスクというよりは、金融セクターで起こる金融危機を懸念しているようだ。
そして、最大の心配事は金融セクターそのものではないのだ。

「残念なことに、私たちが生きているのは通常の時代ではない。
危機管理は自動操縦モードになっておらず、金融システムの安全はそれを管理する人たちの能力に大きく依存している。
いいニュースは、中央銀行が概して優れた人材と指導者に恵まれていること。
悪いニュースは、危機管理が中央銀行だけでなく政府全体を含むことだ。
ここに大きな疑問の余地がある。」

ロゴフ教授によれば、次の危機が大きなものであれ小さなものであれ、構造がリーマン危機とまったく同じものであれば、心配はさほど大きくないのだという。
政府・中央銀行は2008年にやったことを参考にほぼ同じことをやれば、何らかの効果が期待できるからだ。
しかし、危機はいつも顔を変えてやってくる。
そして、危機の種類も多様化する兆しがある。


「次の危機が完全に違うものだったらどうか。
例えば、激しいサイバー攻撃や、世界の実質金利の予期せぬ急騰が脆弱な高リスク市場に不全を来すようなものだったら。
誰か正直なところ、トランプ政権が大崩壊に対処する能力・経験を備えていると言えるだろうか。」

金融危機の収拾では、誰を生かし誰を見捨てるかなど、難しい見極めが要求され、多くの利益相反が生じる。
世論が大きく分断される中でコンセンサスを作り上げなければならない。
ロゴフ教授は、今のトランプ政権・共和党がそれを成し遂げられるかについて、疑念を持っているのである。
そして、最近の教授のお気に入りのブラック・ジャーク、あるいは本音を語っている。

トランプ大統領の下で米国が経験した唯一真実の危機は、トランプ大統領自身であるからだ。

リーマン危機後、米政治はドッド・フランク規制を敷くなど、金融システムの強化に努めてきた。
一方、この規制は電話帳よりも分厚く複雑怪奇との批判も受けた。
結果、規制緩和の御旗を掲げる現政権・共和党の槍玉に上がることになった。

ロゴフ教授は、本来採用すべきだった金融システム強化の方策が採用されなかったことを悔やむ。

政策決定者が2008年以来システムが改善したと言うのは正しい。
しかし、ぶつ切りの改革は、一番必要だったものには遠く及ばない:
銀行の資金調達における株式発行による割合を引き上げる(あるいは配当を再投資させる)ことだ。

ドッド・フランク規制については、アラン・グリーンスパン元FRB議長が廃止を求め、代わりに銀行に20-30%の自己資本比率を義務付けるよう提言したことがある。


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