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金融危機は中央銀行の産物:スタンリー・ドラッケンミラー
2019年12月23日

スタンリー・ドラッケンミラー氏のBloombergインタビュー第4弾: 中央銀行とリフレ政策に対する批判が展開されている。


「少なくとも以前7-8回QEを実施した時、債券は低下し株式は上昇した。
この事実にもかかわらず、ジョン・ウィリアムズ(ニューヨーク連銀総裁)らは、QE・QTが市場に影響を与えないと言った。」

ドラッケンミラー氏がBloombergで、現実に目を向けようとしないFRBのエコノミストを批判した。
FRBがQE・QTについて市場に影響を与えないとしたのには理論的な背景があった。
量的緩和やその巻き戻しとは(プロセスの前後で見れば)政府の部分どうしの間の勘定の付け替えにすぎない。
それだけで経済を刺激するわけではない。
ならばなぜQEが行われたのか。
それは、QEに理論的な有効性がなくても、そうすることで市場の期待に働きかけることができると考えられたからだ。
残念ながら、結果を見る限り、その経路の効果も当初の目的を解決するほどではなかったようだ。

日本でも2016年の日銀の「総括的な検証」でマネタリー・ベース目標を後退させ、ステルス・テーパリングに入り、すでにテーパリングの段階を終えている。
とはいえ、長期国債の買入れが市場に影響を及ぼさなかったわけではない。
日銀は後の検証で、長期国債の買入れが長期金利を押し下げ景気を刺激したと、市場関係者からすれば自明の結論を述べている。
量的緩和に効果はなかったが、その過程で行われた資産買入れには効果があった。
それを巻き戻せば、悪いことが起こるのもまた自明であろう。

ドラッケンミラー氏は、FRBの奇妙な理論を強烈に皮肉っている。

「米国がQTからQEに転換して何が起こったか。
債券価格は低下し、株式が上昇した。
8回中8回だから、すごい幸運と言わざるをえない。」

ドラッケンミラー氏は、拡張的な政策がとり刹那的に経済を良くすればいいというような政策思想を批判する。
現在の世代の幸福のために先食いが行われ、そのつけが後の世代に回る。
後の世代がまたさらにつけ回そうとする。
ほころびがごまかせなくなるまでそれが続く。

「金融緩和をして、状況が良くなって、気分がすばらしくなることはいつも容易だ。
バーナンキは2004年、グレート・モデレーションと言って勝利を宣言したし、グリーンスパンはマエストロと称賛された。
私は墓に葬られる時も、金融危機は金融緩和が生み出したバブルによって起こると信じたまま葬られるのだろう。」

ドラッケンミラー氏は、金融政策の先行きの議論についても疑問を呈する。
とりわけマイナス金利政策について厳しいダメ出しをしている。

おかしな大統領が、マイナス金利にはマイナス金利で対抗する必要があると言った。
相手の国ではマイナス金利が明らかに機能していないのに。
彼らの国は米国ほど経済成長していない。
最も資本主義に逆行するアイデアだ。

ちなみにドラッケンミラー氏は共和党支持者である。
(少なくとも数か月前まではそう言っていた。)
同氏のパウエルFRB議長評はかなり辛口だ。
就任当初、多くの人から高評価を得ていた現議長だが、最近はすっかり評判が下がったようだ。
ドラッケンミラー氏はパウエル議長について、政治からのプレッシャーに対し「何も抵抗していない」と厳しい。

「彼は弱いバージョンのイエレン、金融政策の枠組みを持たないイエレンだ。
バーナンキと私では金融緩和やヘリコプター・マネーについての哲学が相いれなかった。
しかし、彼には信念があり、FRBを制御していた。
FRB議長にはこれが必要だと思う。
それが今はない。」

ドラッケンミラー氏は、1970年代の極度のインフレに立ち向かった故ボルカー元FRB議長を「真のヒーロー」と称した。
様々な横やりにも屈しなかったボルカー氏を称賛し、そうした勇気が今日のFRBにないことを嘆いている。

ドラッケンミラー氏は、そもそも杓子定規なリフレ政策を誤りと考えている。
いつものことながら、中央銀行と金融政策を批判させたら、同氏の雄弁は止まらない。

「まず、インフレには14もの種類がある。
うち12では2%を超えている。
FRBが好むのはコアPCEで1.7%だ。」

そもそも尺度や2%目標からして説得力がないと言いたいのだろう。
このさじ加減が間違うと、経済における資源配分が適切に行われず、市場においてはバブルのようなことが起こる。
それでも、米国においても金融緩和を支持する声が多い。
物価水準目標のように、過去2%に満たない分、将来積み増すべきとの議論さえある。
もちろん、こんなやり方に理論・実証上の正当性が確認されているわけではない

「何かが2に対して1.7であり、取り戻し期間を議論しているとなると、金融政策はフォワード・ルッキングでなくバックワード・ルッキングだということになる。
何でバックワード・ルッキングなのか。」

ハト派は言うかもしれない。
低インフレの時代の何かが経済や人心に残っている。
だから、それを払拭する分、もっと緩和しなければいけないんだ、と。
しかし、ドラッケンミラー氏のロジックはそれを凌駕するものだ。

「1970年代インフレが10%だった後の1980年代、どうして米国は-10%を目標にしなかったのか。
しかも今、私たちは(正確に)測定できもしない数字の小数点以下の位を議論している。」

現世代の人間がご都合主義で拡張的政策を望んでいる面は否めない。
ドラッケンミラー氏は、FRBがその使命を変化させようとしていると警告を鳴らす。
FRBの使命とは物価安定と完全雇用と規定されており、2%物価目標の達成ではないと釘を刺している。
それほど同氏の2%への疑問は大きい。
産業革命の時代を引いて趣旨を説明している。

前回の大きな技術的革命は1800年代終わりだ。
10年にわたって3%のデフレと8%の実質成長があった。

大きなイノベーションがある時、デフレが起こるのは当然であり、必ずしも悪いものと見るべきでないと言いたいのだ。
ドラッケンミラー氏は、現在の米経済でのたとえ話で説明する。

「医療は米GDPの19%に上る。・・・
もしも米国が医療費を・・・19から13に減らしたらどうなるか。
諸外国のほとんどは11%だ。
FRBはCPIがゼロ未満になったとパニックするのだろうか。
これは恐ろしいことなのか。
巨大な危機になるといって、それに対処するのだろうか。」

ドラッケンミラー氏は、現在もそうしたイノベーションが生産性上昇をもたらしているという。
そうした中でデフレが怖いなどと騒ぎ立てること自体間違いだと言っている。

現在、クラウド等によって企業レベルで壮大な生産性上昇が起こっている。
デフレは供給側から起きている限り何も有害なものではない。
『3か月のうちに安くなるかもしれないから今月車を買うのはやめよう』などと言っている人を見たことがない。
しかも、米国はデフレでもないんだ。
単なる想像上の現象でしかないんだ。


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