金融ブラックホールのワンダーランド:ローレンス・サマーズ

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)は、貿易戦争の生み出す不確実性が金利低下を誘い、米国もブラックホールにはまり込むことを心配している。


これは大した合意ではない。

サマーズ氏がCNBCで、トランプ政権が成果を誇った米中部分合意について斬り捨てた。
どうやらこの合意に対するコンセンサスはこのあたりにあるようだ。
それでも米政権は成果を誇り、市場はそれに前向きに反応している。

市場はおそらく米中交渉の日々の変化に過剰に反応している。
そして、世界の2大経済の亀裂についての広範なリスクに対しての感度はおそらく不十分だ。

では、米中間に存在する広範なリスクとは何だろうか。
サマーズ氏は、まさに大所高所に立った見識を披露する。

「世界は1つの統合した経済となるのか?
それとも米国圏と中国圏からなる分断された経済になるのか?
それが本当に根本的な疑問だ。
貿易交渉にあたっている者が豚肉等をいくら購入するなどと話している時に話すことではない。」


なんと皮肉なことか。
サマーズ氏の問題意識が的を射ているのは間違いない。
これこそ大所高所からの議論だ。
その一方で、こうした問題意識は大衆には必ずしも受けない。
世の中には豚肉や大豆がいくら売れるのかの方に集中せざるを得ない人たちがいる。
そこにポピュリズムが忍び寄る。
間違ったところに焦点を当てた方が票が取れる。
それが今の米国であり、他の国でも程度の差こそあれ同じような状況だ。

サマーズ氏は、長く引きずるであろう貿易戦争が経済に及ぼす悪影響を心配する。
それは輸出入といった経済の一部だけでなく、経済の隅々まで波及する。

「不確実性が人々の投資意欲を低下させ、おそらく貯蓄を増やさせ、手許の流動性を増やさせる。
これにより、過去数年見られたような、高成長でなく低金利へ向かう傾向を悪化させる。
最終的には2大大国が先鋭に対峙するようになり、世界の安全保障上の懸念となりかねない。」

サマーズ氏は、関税がかけられているにもかかわらず、現時点ではインフレ・リスクよりデフレ・リスクの方がはるかに大きいと話す。
また、現在が景気サイクルの終盤と考えている。
2020年末までの景気後退入り確率を50%弱と予想している。
サマーズ氏の想定が示唆するのは、遠くないうちにFRBの金融緩和が本格化することだろう。

大きな心配は、私が金融ブラックホールと呼んでいるものだ。
日欧がはまってしまったゼロ金利に(米国も)はまり込むことだ。
あと1回の景気後退でその状態になってしまう。

サマーズ氏は、ゼロ金利の世界が経済の作法を変えてしまうことを恐れている。


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