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金利上昇の原因は債券への需要不足??:ピーター・シフ
2019年11月15日

ユーロ・パシフィック・キャピタルのピーター・シフ氏がめずらしく個々のニュースにコメントする形でテレビ出演しているが、ひたすら権力を批判する姿勢がとても面白い。


私は最初から中国との間で本質的な貿易合意など成立しないと言ってきた。
・・・『第1段階』は基本的にゼロだ。・・・
私たちは貿易戦争が始まる前のスタート・ラインに戻っただけなんだ。

シフ氏がロシア国営RTで、トランプ政権が成果と自慢する米中部分合意について酷評した。
もっとも、これだけなら他にも多くの識者が言っていることだ。
シフ氏の真骨頂とは、権力の欺瞞を厳しく批判し、皮肉の極みとも言えるレトリックを用いるところなのだ。

「大統領は(米中部分合意を)USMCAのように勝利と語るだろう。
USMCAは単にNAFTAにより悪い名前をつけただけのものだ。
・・・
重要なのは、トランプが選出された時より貿易赤字が拡大している点だ。
貿易戦争の目的とは、アメリカが再び貿易で勝つことなのに。」

貿易収支の改善だけが貿易戦争の目的ではあるまい。
世界第2位の経済に成長した中国に対し、貿易に限らない広範な分野でイコール・フッティングを求めることが目的のはずだ。
だから、シフ氏の皮肉は少々きつすぎるだろう。
ただし、それが向けられた大統領に限っていえば、貿易戦争の目的が自身の票稼ぎのように見えて残念だ。

プライベート・エクイティー・ファンドによる企業買収について解説を求められても、シフ氏のコメントはもう1つの権力、FRB批判に向かう。

マネーが安い時代、たくさんのプライベート・エクイティーによる買収が行われている。
・・・
しかし、FRBが金利を通常の水準まで戻せば、こうした案件はなくなり、経済はバブルを続けるのでなく、より健全にリストラを迎えるだろう。
現在は、倒産した方がいい企業を支えてしまっている。

最近の金価格の調整についてコメントを求められると、ゴールド・バグの第1人者として巧みなレトリックを用いている。
ここでも中央銀行・財政当局へのダメ出しが重要な論拠になる。

「結局は、金利が上昇している理由は経済におけるインフレ圧力の上昇であり、売られた債券への需要不足だ。
これらすべてのことは金を強気に見る材料だ。
だから、単純に債券を売るのではなく、金を買うべきだ。
投資家はドル、不換通貨全般を手放すべきで、本当の安全資産を求めるべきだ。
それが金なんだ。」

経験則から言えば、金利上昇は金下落を連想させる。
金にはクーポンのない永久債のようなところがあるためだ。
(筆者はこうした商品の価値をゼロと考えているが、そう思わない人たちが醸したバブルが数千年続いている。)
ただし、金利上昇の要因がインフレだけならば、シフ氏の主張も完全におかしいとはいえない。
経験則にかかわらず、さもありそうな逆説を唱えるところがこの人のすごさであり危うさだろう。


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