ゴールドマン・サックスが金価格予想を上方修正しているが、そこにはいくつか注意すべきシナリオも共存しているようだ。
金投資への需要は、継続的な貨幣価値低下への懸念と金利低下により、経済回復の初期に増える傾向がある。・・・
同時に、ロックダウン緩和とドル安で促進される(新興国市場の)消費需要の大きな回復を予想している。
ゴールドマンが金価格予想を上方修正したとMarketWatch 1) ほかが伝えている。
同社予想の理由は大きく3つ:
- 先例のない大規模な金融・財政政策によりドルの価値が低下することへの懸念
- 経済回復期待
- ドル安の恩恵を受ける新興国市場での需要回復への期待
ゴールドマンによる金価格予想(オンスあたり米ドル)は次の通り。
ホライズン | 今回 | 前回 |
3か月 | 1,800 | 1,600 |
6か月 | 1,900 | 1,650 |
12か月 | 2,000 | 1,800 |
足元の金上昇の要因は1つ目の《懸念》によるものだろう。
しかし、ドルの価値低下、つまりインフレ上昇はまだ決まった未来ではない。
金価格(青、左)、銀価格(赤、右)
リーマン危機後、FRBはQEなど非伝統的金融政策を開始した。
市場はこれに対し貨幣価値低下への懸念を高め、それが2012年にかけて金価格を押し上げる結果となった。
しかし、予想に反してインフレは起こらず、ついに市場はインフレへの懸念を解き、金を見限ったのだ。
ゴールドマンは、インフレ上昇が起こらなければ同様の調整が起こると、リスク・シナリオを提示する。
さらに、ゴールドマンは、2,000ドルを超えて金が上昇する条件を挙げている。
政策の不確実性を別としても、貨幣価値低下への恐怖は、こうした危機後の環境では金価格の主要ドライバーであり続けると信じている。・・・
金の価格が2,000ドルを大きく上回るためには、インフレがFRBの2%目標を超えることが必要であり、そうなれば、政策対応は抑制されることになろう。(Reuters 1))
これは上振れの可能性を示すとともに、その先の調整を暗示するものでもある。
インフレが上昇すれば金がさらに買われるだろうが、そうなれば拡張的な金融・財政政策が巻き戻しを模索し、それが金離れを生みうるといっているわけだ。
なお、ゴールドマンは銀についても予想を上方修正した。
ゴールドマンによる銀価格予想(オンスあたり米ドル)は次の通り。
ホライズン | 今回 | 前回 |
3か月 | 19 | 13.5 |
6か月 | 21 | 14 |
12か月 | 22 | 15 |
工業需要の多い銀では上昇要因の重点は金と異なるようだ。
経済が回復し『恐怖』による金需要は落ち着き、銀の工業需要が増大し価格が上昇すると予想している。1)