量的緩和の罠に囚われるFRB:ピーター・シフ

Euro Pacific Capitalのピーター・シフ氏は、FRBが金融緩和への逆戻りを強いられると予想している。
その展開は、量的緩和拡大時に心配された《QEトラップ》そのものである。


米国は、米史上最悪のインフレの脅威にさらされている。
それなのに突然パウエルFRB議長は過去数か月、もう心配していないと言い出した。
これほどの低金利、6年にわたるゼロ金利、半年間の0.5%、1%。
過去10年間の量的緩和にもかかわらず、過去数か月のうちに何かが起こったのだ。
・・・過去数か月のうちに何が起こったっていうんだ?

シフ氏がポッドキャストで聴衆に問いかけている。
9月までの米実体経済と現在とでは何が変わったのか。
実体経済を見る限り、米経済が悪化の一方というわけではない。
弱含みの指標も少なくないが、逆に経済の好調を示す指標も見受けられるからだ。

「わずか数か月後、経済全体としては実質的に何も変わっていない。
確かに政府閉鎖はあったが、それも終わり、たいしたことはなかった。
弱い経済データはあったが、それもこれまでずっとFRBが無視してきたことだ。」

では、いったい何が変わったのか。
それは、実体経済ではなく市場の側だ。


「9月のFOMCと現在で唯一変わったのは、株式の弱気相場だ。
昨年第4四半期に株式市場が弱気相場に入り、下落傾向が加速し、それが12月の最後のFRB利上げとともに起こった。
・・・それこそが、FRBが金融政策について完全に180度方向転換した唯一の理由なんだ。」

パウエル議長がハト派側にシフトした際に語った理由は「世界経済の不確実性」だった。
確かに先週のFRBの路線転換の大きさに対して「不確実性」という理由は弱いかもしれない。
しかも、国外要因を主因にこうまで路線を変えるのも解せない。
シフ氏をはじめ市場関係者の多くは、本当の理由が米市場の動揺にあると考えている。
資産効果が比較的効きやすい経済構造のため、FRBが米市場の安定を望んだという解釈だ。
シフ氏は、FRBが利下げと量的緩和への逆戻りを強いられることになると予想する。

ほどなくして市場はFRBに、利上げ停止やバランスシート縮小を行わないとの約束以上のことを要求するようになるだろう。
依存患者はさらなる量的緩和とゼロ金利を要求するようになる。
FRBは、その必要性を理解すれば、それを提供するはずだ。

米国は再び流動性の罠に陥るのか。
そして、量的緩和の罠に陥るのか。
もしもそう見えるような展開となれば、世界の中央銀行は恐れおののくことになろう。


 - 海外経済 ,