野口悠紀雄氏:株価は上昇したが企業所得は増えていない

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早稲田大学ファイナンス総合研究所・顧問 野口悠紀雄氏が、円安の弊害について説いている。
円安は成長をもたらさず構造改革を怠らせるとの主張だが、そこに至る分析の過程が興味深い。


野口氏は週刊ダイヤモンドへの寄稿で「成長率が高かったのは円安期でなく円高期」だったと書いている。
アベノミクス初期の円安期と直前の円高期を比較し、経済は後者の円高期の方がよかったと紹介している。

「この期間には、東日本大震災があった。
そして株価の動向ははかばかしくなかった。
そのため一般に日本経済が停滞していたと思われているのだが、実際にはそうではなかったのだ。」

こうした話は要因や因果関係の捉え方次第で解釈が変わるのだろう。
少々イメージと違う印象を覚えるが、これにはタネがある。

  • 円高期はディスインフレだったから名目ベースで成長しなくても実質ベースではそこそこの数字になる。
  • 円安期はインフレ率が高まり、名目ベースで成長しても実質ベースでは悪い数字になってしまう。

こう見る限り、インフレが最終的な目標とはなりえないことがわかる。
リフレ政策が功を奏しても、経済が実質ベースで成長しないのであれば意味がない。
リフレ政策の真価は、本当にインフレが(遅れてでも)実質成長をもたらすかにかかっている。
その可否はそろそろ明らかになるのではないか。

さて、野口氏のコラムの重要なところは、こうしたところではない。
野口氏は、円安やインフレが格差拡大の一因になった点を問題視している。
「円安によって物価が上昇し、それが実質賃金の伸びを抑えた」一方で株価上昇で財産所得は大幅に増加したと紹介する。
興味深いのは、株価が上昇したのに企業所得が増えていないとの指摘だ。
「大企業の営業利益が激増する半面で、小企業の利益が増えていない」ためだ。
トリクルダウンの破綻はここでも垣間見える。

いやな話だが、個人も法人も格差拡大が進んだように思える。
投資家の皆さんにはさぞかし居心地の悪い話なのではないか。