野口悠紀雄氏:トランプ大統領に突っ込まれそうなところ

Share

早稲田大学ファイナンス総合研究所・顧問 野口悠紀雄氏が、トランプ大統領の個別企業への介入について心配している。
企業経営への介入については抗議できるが、為替操作への批判については分が悪いと書いている。


野口氏は週刊ダイヤモンドのコラムで、トランプ大統領による企業経営への不当な介入を批判している。
トヨタ自動車メキシコ工場新設に対するツイッターによる批判について「言語道断」と書いている。
野口氏は、この事態に対し

  • 正攻法: 外交努力
    米政府に不当な介入を控えるよう働きかけ、世界の世論にも訴える
  • 現実的対応: 中国との関係改善
    米国一辺倒の外交を見直し、中国との関係を改善することで、米国に対する「一定の立場を確保する」

ことが必要と主張している。
トヨタに対する批判は(これまで米国も求めてきた)国際社会のルールに照らして正当化されえまい。
ただし、ツイートの本気度にも疑問があり、無視すればそれですむとの観測も成り立ちうる。
少なくとも、この問題に関しての閣内不一致は明らかだ。

ここでは、野口氏が議論の中で言及した一つのポイントに注目したい。

「日本が過度の金融緩和によって円安をもくろんでいるという議論は、十分に説得力がある。
2%のインフレ目標は、円安が継続しない限り実現できないことを考えても、アメリカから批判された場合、日本が反論できるかどうか疑問だ。」

異次元緩和スタート直後の2013年8月、日銀の岩田規久男副総裁は「『量的・質的金融緩和』のトランスミッション・メカニズム」について講演している。
副総裁の伝達経路の図には「円高修正」の経路が明記されている。
リフレ派の理論的支柱とされた浜田宏一イェール大学教授も、十数年前から為替動向が最優先課題の一つである旨の発言を繰り返している。
日銀が昨年9月の「総括的な検証」のために行った要因分析でも、物価上昇に及ぼした円安効果の大きさが確認されている。
名実ともに、異次元緩和は通貨安政策の色彩が強かったわけであり、こうした資料は米国にとっては《証拠》としての意味を持つ。
(もちろん、通貨安といっても、それが自動的に悪とされるべきではなく、何事も程度の問題だ。)

野口氏が危惧するように、米国が日本を攻撃したければ、為替操作国としての批判となろう。
この可能性は、(勝手な話とは思うが)FRB利上げが進むにしたがって大きくなるだろう。
一方、米国が中国を攻撃するなら、為替操作国とするには無理がある。
この場合、中国の国内政策を取り上げて非関税障壁と責めるのではないか。