海外経済 投資 政治

重要なことは適切なマクロ政策で:ローレンス・サマーズ
2021年5月31日

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が、バイデン政権の政策の目的に賛成しつつ、それを支える財政・金融政策について異を唱えている。
こうすることで自身に利益はなく、ただただ憎まれるだけなのに、臆することなく言い続けている。


「これら(バイデン大統領のやろうとしていること)は正しく重要なことだ。
子供たちや取り残された人たちのためにも力を尽くしている。
私はすべてに賛成で、とても重要と考えている。」

サマーズ氏がBloombergで、バイデン政権のやろうとしている政策の目的に賛成した。
一方で、その目的を果たすためのやり方に注文を付けている。

国として将来予定する総支出と将来予定する税収を見た時、短期・中期の両方で過熱を心配している。
私が趨勢的停滞と呼んできた力、人々が使いたがらない状況が強くなって、経済を後押しするためにこのような莫大な財政赤字と異常な低金利が必要になったのかもしれない。
これがうまくいく可能性もある。
しかし、より大きな確率で、需給の間の衝突のようなことが起こると考えている。

サマーズ氏は21世紀の趨勢的停滞論を唱えるなどハト派の中心的経済学者の1人とされていた。
その同氏が政権交代が決まって以降、支持してきた新政権の金勘定、特に財政政策に注文をつけている。
3月には拡張的な政策がインフレにもたらす影響について3つのシナリオを呈示してリスクを警告した。

サマーズ氏は、数か月前にバイデン政権が予算の前提を設定した時から状況が変わっている点を指摘する。

「今年の10年金利を1.2%とするのは今ではあまりよくない。
すでにインフレは2%前後だ。・・・
こうしたサプライズの大きさが教えるのは、今後についていくらか修正を加えるべきということだ。」

財務長官など多くの公職を経験した経済学者は「ワシントンのインフレ3部サイクル」が進み始めたと心配する。
そのサイクルとは

「まず、これが問題でないと否定する。
次に、これが単に固有の一過性の要因によるものと主張する。
そして、最後にこう言う:
『結局はこれは大きな問題じゃない。
物価とともに賃金は上昇しており、大丈夫だ。』」

硬直的な行政府・立法府で起こりそうな話だ。
最近、スティーブン・ローチ氏が、1970年代の2桁インフレを招いたアーサー・バーンズFRB議長(当時)について、似たような話を書いていた。

サマーズ氏のレトリックは周到だ。

「私が心配する理由は、基礎的なことをやるのがとても重要だから、大統領がやろうとしているという点だ。
でも、マクロ経済も舵取りしないといけない。」

目的が大切だから、何としてもやりとげなければいけない。
だからこそ手段を誤ってはいけない、というレトリックだ。
(日本人は全く笑えない。
他山の石とはこういうことだろう。)
サマーズ氏は敵を正論で追い詰め、相手の心を打ちのめすタイプの論客であり、一番敵に回したくないタイプなのだ。

さて、サマーズ氏は経済の過熱とインフレを警戒している。
では、同氏の金利予想はどのようなものか。
通常なら経済過熱は実質金利上昇を連想させ、インフレが上昇するなら名目金利も上昇すると考えるのだが、そうはいかないのが今の世界だ。

インフレについて安心しきっているFRB、インフレ上昇傾向、決定的な一連の構造要因(人口動態、安い情報、技術、経済の脱マス化(demassification of the economy))の中で、10年の物価連動国債利回りがプラスになるまでには長い時間がかかるだろう。
今後3-4年のうちにはないと推測している。

不思議なことに、いろんな予想者がいるのに、資産市場にとって有害となるような金利上昇シナリオはほとんど出てこない。
いろんなことを喜び、心配しても、最後に資産価格となると、みんな強気バイアスの話を口にするようだ。


-海外経済, 投資, 政治
-, ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 その他利用規約をご覧ください。