海外経済

重要でないFF金利が重視されている:ウィリアム・ダドリー

ウィリアム・ダドリー元ニューヨーク連備総裁は、FRBの利上げ時期を巡って市場が憶測をめぐらす中、FF金利についてとてもメリハリの利いた提案をしている。


米FRBの金利決定は米国や世界に大きな影響を及ぼしている。
しかし、FRBが目標をおく短期金利、FF金利はもはや経済において重要な役割を演じておらず、時々脱線しないよう見直すことが必要になっている。

ダドリー氏がBloombergへの寄稿で、FRBの短期政策金利について解説している。

FF金利とは何か。
フェデラル・ファンド市場の金利であり、この市場は日本でいえばコール市場にあたる。
市中銀行は受け入れている預金残高の一定割合を連銀に無利息の準備預金として預けなければならなかった。
ある市中銀行でこの準備預金が必要額より不足すると、その銀行は他の銀行からフェデラル・ファンド市場を通し調達しないといけない。
この金利がFF金利である。
FRBはこの金利を誘導することで、短期金融市場の金融調節を行っている。
FF金利を誘導することで、市中銀行からの貸出金利に働きかけることができた。

ダドリー氏は、状況が大きく変化したと話す。
超過準備に金利が付されるようになったこと、QEで莫大な超過準備が発生したことが、状況を大きく変えた。
莫大な超過準備が存在するのだから、そもそも準備預金が不足しなくなった。
フェデラル・ファンド市場は以前の意義を失っている。
ダドリー氏は、これがFRBにとって問題となる可能性があるという。
最近の例として、ありあまる準備預金でFF金利が低下した局面を挙げた。
FRBはFF金利を誘導目標に収めるため、超過準備への付利の金利とレポ市場の金利を操作しなければならなかったと紹介した。

もっとも、当面金融緩和を継続する意思のあるFRBにとって、短期金利が下がりすぎることは問題であっても致命的とまではいえない。
オペのやり方が少し難しいというレベルの話ではないか。
切れ者のダドリー氏の発信だけに、もっと大きな裏があると考えた方がよいだろう。

ダドリー氏は解決策を2つ呈示する。
1つ目は「簡単な解決策」:

FF金利を目標にするのではなく、かわりに準備預金に付利される金利を用いて金融政策を調節すればよい。
短期金利を望ましい水準に維持するのに完全に十分なツールだ。

2つ目は、市中銀行のレバレッジ・レシオを計算する時に、準備預金を無視しろというもの。
QEにより銀行のレバレッジ・レシオが拡大したが、これではリスクを適切に反映しない過度な規制になってしまうためだ。

今月半ばのFOMCを境に、市場の関心はテーパリング時期から利上げ時期へと少し前に進んだ感がある。
1つ目の解決策は、それと大きく関わっている。

ダドリー氏は、FRBが金融政策の声明でFF金利誘導目標に言及し始めたのが1998年8月からだと指摘する。
FF金利はFRBにとって永年の目標であったわけではないのだ。

これは日銀についてもいえることだ。
日銀は1998-2001年、無担保コールレートを政策金利として採用していた。
量的緩和政策の間、政策金利はなくなっていたが、2006年には再び無担保コールレートが政策金利となった。
2013年の量的・質的金融緩和で再び政策金利はなくなり、2016年のマイナス金利付き量的・質的金融緩和で超過準備(一部)への付利の金利が政策金利となり、同年の長短金利操作付き量的・質的金融緩和で長期金利が追加された。
日本の紆余曲折が目立つが、現時点での短期政策金利は超過準備の一部への付利の金利である。

ダドリー氏の提案は、それと同じやり方を取り入れようというものだ。
だから、実現性は極めて高い。
問題は、本当の意図だろう。
今後、市場は、テーパリングよりはるかに本質的な意味を持ちうるFF金利引き上げ時期について神経質になる懸念がある。
もしも、FF金利が政策金利でなくなるなら、こうしたあまり意味のない動揺からは解放されるかもしれない。
なにしろ、ダドリー氏によれば、フェデラル・ファンド市場自体がかつての意義を失っているのだから。
もちろん、市場は不利の金利を巡って新たな勘繰りを始めるのだろう。
それでも、実際に意味のある金利を巡って勘繰りが行われる方がましなのかもしれない。


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