オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏のCGTNインタビュー第2弾: ブラック・マンデーとリーマン危機の教訓を語っている。
私は結論に達した。
楽観が過剰な時、私の仕事は『それは事実にしては良すぎる』と言うこと。
悲観が過剰な時、私の仕事は『それは事実にしては悪すぎる』と言うこと。
そうやって私たちは危機の中お金を儲けてきた。
ディストレスト投資の草分けの1人であるマークス氏がCGTNで語った。
これは何もディストレストの世界だけの法則ではなかろう。
投資では多くの場合、心理の振り子が現実を行きすぎた時にチャンスが訪れる。
マークス氏の結論は、過去の危機の思い出を尋ねられた時、その思い出の教訓として語られたものだ。
1つ目は1987年10月のブラック・マンデー。
この暴落は、ポートフォリオ・インシュランスと呼ばれる取引によって助長されたと言われている。
本来リスク回避のための取引だったのだが、それが過信だった。
「ポートフォリオ・インシュランスとは、市場が上昇している時には儲かり、市場が下がっている時には損しないという技術だった。
もちろん、存在すること自体が非論理的なのに、みんなが追い求めた夢だった。
いずれにせよ、ポートフォリオ・インシュランスへの過信があり、それがあるべき水準より多くのポートフォリオ・リスクを投資家に取らせたのだ。」
人々が楽観になる時、往々にして人々を過信に引き込む材料が存在する。
ブラック・マンデーではその1つがポートフォリオ・インシュランスだった。
しかし、この保険は「単純な」ことで機能しなかった。
「ポートフォリオ・インシュランスの引き受け手は、いつもちゃんと間に合うと約束した。・・・
ポートフォリオ・インシュランスを機能させるためみんなが売り注文を出そうと証券会社に電話した(当時はそうだった)ところ、彼らは電話に出なかったのだ。
・・・この教訓は、機能すると思われていることがいつも機能するとは限らない、ということだ。」
リーマン危機の時も、注文が殺到したために、ネット注文を含め注文が出せない、または時間がかかる証券会社があった。
ブラック・マンデーの時代に1日で20%超の下落が起これば、注文受付が滞るのも当然といえば当然だった。
ブラック・マンデー前は、過度な楽観の例だった。
リーマン危機の時は、過度な悲観の例だ。
「2008年10月、メルトダウンへの恐怖が最大だった頃、私がどんなに保守的な仮定を述べても、みんなを満足させられなかった。
みんな『いいや、それは十分に保守的ではない』と言った。・・・
過度な悲観であり、積極的なギアに入れるべきと私は言い、そう実行した。」
マークス氏は最近の下げでも、ディストレストをそこそこ買っている。
もちろん儲かるとの見通しを持っている。
相場の先行きはわからないが、今はそこそこ買うべき時と言い続けている。
先行きを問われる時、マークス氏は迷いなく「わからない」と話す。
背景にある信念を、マーク・トウェインの言葉を引いて説明した。
「『あなたに問題をもたらすのはあなたが知らないことではない。
知っていると思い込み正しくない場合だ。』」
無知の知ということだろう。
この考えは投資にもとても良く当てはまる。
『確実だ』とか『見逃しはない』という時、人は大胆な行動をとる。
それが間違いなら、大きく損をする。
もしもあなたが素晴らしい知識を有していないなら、投資家として成功することはできない。
あなたは、あなたが知っているということを本当に知っていなければならない。