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運命と3つのサイクル:レイ・ダリオ
2020年9月28日

ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が運命と3つのサイクルについて、目新しくはないが、これまでと少し違った書き方で書いている。


運命と大きな債務サイクルによって、米国は長期債務サイクルの終盤に立たされている。
終盤ではあまりにも大きな債務を抱え、はるかに多くの債務を急速に生み出さざるをえない。
ハード・カレンシーでの返済は難しく、政府財政赤字を賄う典型的なサイクル終期の方法である貨幣増発によって債務を貨幣化しなければならない。

ダリオ氏が自身のSNSで、米中の3つの運命とサイクルについて書いている。
(同氏が執筆中の新著『変わりゆく世界秩序』(仮訳)の第7章。)

1つ目は、運命と債務サイクルの働きだ。

超長期の債務サイクルでは、拡大期に持続可能性が疑われるほど債務が膨張することがある。
債務が膨張しすぎると、財政の維持が困難となり、中央銀行が不換貨幣で政府債務を買い入れる。
政府債務の一部が中央銀行によって抱え込まれ、代わりに貨幣が発行される。
こうすることで債務が貨幣に変換される。
政府債務のリスクが軽減され、そのリスクが貨幣に転嫁されるようになる。

ダリオ氏は、米国においてこうした過剰が起こった原因を解説する。

「皮肉で典型的にこの悪い状況に陥った原因は、米国の成功が過剰につながったことにある。
例えば、米ドルが世界の支配的準備通貨になったという米国の大きな世界的成功によって、アメリカ人は(中国を含む)諸外国から過剰な借金をすることが可能となった。
これは、(中国を含む)諸外国に大金を借金するという薄弱な地位に米国を置いた。」

米国の大きな債務が米国の弱みであるのは間違いない。
では、債務を保有する諸外国にとっては強みなのかというとそうでもない。

「またこれは、急速に債務を増やし貨幣化し、保有者にマイナスの実質金利を支払う過剰債務国の債務を保有するという薄弱な地位に諸外国を置いた。
言い換えると、中国が世界の準備通貨により多くの貯蓄をしようとしたのは、典型的な準備通貨サイクルのためだ。」

現在、米中は覇権争いの序章を演じている。
中国は世界第2位の対米債権国だが、それは必ずしも有利に働いていない。
長期的に凋落するかもしれない主要準備通貨を抱えることはリスクでもあるからだ。
世界第1位の対米債権国の日本はなおさら大きなリスクを抱え、同盟国であるがゆえに武器として扱うこともできない皮肉な立場にある。
もっとも、ダリオ氏の興味は米中にあり、日本の立場など興味がないようだ。

ダリオ氏が2つ目に挙げたのは運命と富のサイクルだ。

運命と富のサイクルの働きによって、特に資本主義の下では、アメリカ人が大いなる進歩、富、ついには大きな富の格差を生むようにインセンティブと資源が与えられた。
格差は今対立を生み、国内の秩序、米国が強くあり続けるのに必要な生産性を脅かしている。

貧困が広がるにつれ、多くの子供・若者たちから教育等の機会まで奪ってしまう。
これが機会の均等を奪い、社会を分断させ、教育の不足から生産性向上の妨げになるとの主張であろう。
ダリオ氏は、米国が資本主義によって進歩し、資本主義によって衰退する危険にさらされていると書いている。
一方、中国はかつての財政的失敗があったため逆に「革命的変化」を選択し、大きな進歩を遂げたとしている。

ダリオ氏が3つ目に挙げたのが運命と世界覇権のサイクルだ。

同様に、運命と世界覇権のサイクルの働きによって米国は今不幸な状況に置かれ、二者択一を迫られている。
a) 自国の地位と既存の世界秩序を防衛するために戦う。
b) 撤収する。

ダリオ氏は、米国が台湾を守るか撤収するか選択を迫られることになると予言している。

ダリオ氏が話しているのは数十年から数百年のサイクルの話だ。
だから、必ずしも、今すぐに大きな変化が起こると予想しているわけではないだろう。
とりわけ頭のいい人は先を読みすぎるところがある。
その点は十分に注意して読むべきだ。

ただ、いつかは別として、ダリオ氏はその大きな変化を確信している。

歴史が示すのは、すべての国にとって成功できるかは、凋落につながる過剰を生み出すことなく強まる力を維持できるかにかかっている。
本当に成功した国はそれを200-300年続けることができた。
永遠に続けられた国はない。


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