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追加緩和は副作用ばかり:モハメド・エラリアン
2020年11月7日

アリアンツ首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、米大統領・議会選挙の経過を踏まえ、再度金融政策への依存が高まるのを心配している。


今年の選挙は、米国が、現在・将来の世代の脅威となる山積する課題に直面し、深く分断された国であることを明らかにした。
厳しい健康上・経済上の危機という形で多く催促されているにもかかわらず、米国は必要とされる決定的手段を始めるつもりがなく、また可能でもない。

エラリアン氏がThe Financial Timesで、米社会・経済について暗い見通しを書いている。
同氏は米国の重要課題を3つ挙げている。
経済や公衆衛生の課題を説明した後、エラリアン氏は3つ目として金融政策に言及している。

第3に、米FRBは、ますます非効率で歪みを避けられない政策手段を講じるよう、再び求められることになる。
適切に引き受けるのはもちろん値付けするのも難しいリスクに保険をかけるよう、FRBに圧力がかかるにつれ、伝統的な金融政策の考え方がさらに根拠を提供し続けることになろう。

トランプ政権が減税等の財政政策を講じた時、内容はともあれ、多くの人が財政政策を用いることに賛成した。
この時の考え方には2つあった。
1つ目はとにかく刺激策が好きなハト派だ。
金融政策の余地が小さくなり、それでも当初思ったほどの目覚ましい結果(さっさと金融緩和をやって問題を解決し、さっさと金融政策を正常化する)にならなかったため、次は財政政策という話になった。
オバマ大統領は共和党にいじめられ財政政策の余地をほとんど与えられなかった。
それが、トランプ大統領になり可能になったのだ。

2つ目は、金融政策への過度な依存を心配する人たちだ。
金融政策はすでに乾いたタオルになっており、これ以上強化しても効果が低減してしまう。
あるいは、副作用が心配されるようになる。
だから、中身はどうあれ、トランプ政権の財政政策を歓迎した。
実際、財政政策が打たれた当初、FRBは次に備えて金融政策正常化を進めようとした節がある。
その正常化の努力が昨年頓挫したのは衆知のとおり。
FRBは、不運にも金融政策をかなり伸び切らせたままコロナ・ショックに突入してしまった。
その後のFRBの市場救済策はもちろん当座の救済策として有効だった。
しかし、そのしくみは市場を歪める、そのものである。

エラリアン氏は、これ以上金融政策に大きく期待できないし、すべきでないと書いている。

実験的な非伝統的金融政策をさらに強化するという冒険によっても、純粋に経済を刺激することはほとんどないだろう。
代わりに、金融市場の歪みをさらに生み出し、無責任なリスクテイクのインセンティブを増やし、経済全体での誤った資源配分につながる。
これが金融不安定の脅威を高める。
この過程で、メインストリートとウォールストリートの断絶は拡大し、政治・社会的課題を生む。

エラリアン氏が書くほど、予想される米政策ミックスを悲観すべきか否かはわからない。
ただ、なんとも皮肉なのは、持てる者は(短期的かもしれないが)「金融市場の歪み」で儲けようとしていること。
そして、持たざるメインストリートは刺激策を素直に受け入れるしかなく、結果、格差を拡大させる政策を容認しているようだ。
たまに長期的な財政再建の重要性を説く人がいると、批判を浴びることになる。
この政策ミックスには当面ブレーキ・ポイントが見当たらないのかもしれない。


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