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足下のインフレには心配もワクワクもしない:レイ・ダリオ
2021年6月22日

ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が、足元のインフレと貨幣的インフレの違いを説明し、貨幣的インフレの時代に考えるべき投資について話している。


「私は、古典的な・・・需要が供給を上回るものについて特に心配していない。
GDPの10%ほどが金融資産として置かれており、これが支出に回っているため、この種類のインフレはすぐに発現する。・・・
3%インフレとか、いくらか跳ね上がったりとかしても、私がとても神経質になったり、とてもワクワクしたりするものではない。」

ダリオ氏がBloombergで、自身が心配してきたインフレについて説明している。
足下のインフレは主に実体経済における需給のミスマッチによるインフレだ。
ペントアップ需要と供給制約が同時に起こったことで、足元のインフレ率は相当に高まっている。
しかし、ダリオ氏が心配するインフレは実体経済で起こるインフレではなく、米国債の需給によって引き起こされる貨幣的インフレだという。

米国は、米国債の在庫を持つ世界の投資家に莫大な米国債を売らないといけない。
米国債の利回りはとても低く、実質利回りはマイナスであり、投資家は米国債をオーバーウェイトしているのに、さらに買ってもらわないといけない。
これが、中国ほかの資本市場がより魅力的になる時に起こっている。
これは需給の問題を生じさせ、貨幣的インフレを引き起こしうる。

米国債の需給が悪化すれば、金利は上昇し、財政はますます苦しくなる。
目先の解決策はそう多くない。
投資家が買い増してくれないなら、中央銀行が買うしかない。

ダリオ氏はこの展開を見透かしている。

これが意味するのは、FRBテーパリングや(バランスシート)縮小ができず、現実には、金利上昇を防ぐために(バランスシート)拡大を余儀なくされる可能性が高いということ。
これが典型的な貨幣インフレだ。

経済が過熱しようが、インフレが起ころうが、FRBは金融政策を正常化できない。
インフレを退治できない状況が続く。

ダリオ氏はこうした貨幣的インフレを心配し、従来からの投資アドバイスを繰り返す。

「これが意味するのは、債務商品を保有すべきでない、とりわけ現状で金利を生まない現金等価物を保有すべきでないということだろう。・・・
ざっくりいって3%近くになれば、購買力という意味でその率の『税金』を課されてしまう。」

インフレが1%でも2%でもいわゆるインフレ税の効果が存在することには変わりがない。
それでもダリオ氏があえて3%と言ったのは、2%までは米社会が許容するとの考えがあるからだろう。
2%までは金融政策のために我慢するが、3%になったら我慢できないぞ、といった感覚を代弁しているのではないか。

ダリオ氏は「現金はゴミ」というフレーズを一躍流行らせた。
では、そこから導き出される戦略は何か。
ゴミでないものに投資し、その原資として「ゴミ」を借りることだ。
投資後、ゴミでないものは価値を高め、「ゴミ」はゴミであり続けるだけだからだ。

「他の資産ではインフレが継続すると予想しており、たくさん借りて損はないだろう。
借金して家を買えば、金利がない中でローンの金利を払うことになる。
言い換えると、元本返済を急ぐ必要はなく、金利はとても低い。」

お金が価値を下げると予想する時、お金は持つものでなく借りるものになる。
こうした戦略は、過去にも貨幣が増発されるタイミングで機能してきたものだ。

借金による投資の有効性を認めながらも、ダリオ氏は、それがマクロに見ると問題となる点を心配している。

バブルが膨張しており、こうしたことを私は心配している。
FRBが引き締めを匂わしただけで市場は反応した。
ネガティブな効果なくFRBが大幅に引き締めることなどできない。

米国ではリフレ・トレードが終わったとの見方も多い。
確かに、実体経済のインフレには一過性の要素が大きく、それに根差したトレードは下火なのだろう。
一方、パンデミック前から存在した壮大なインフレ予想は、パンデミックによってむしろ根拠を強めている。
金融・財政政策ともにパンデミック前に戻る日はとても見通せない。
この投資テーマが今後もくすぶり続けることを覚悟すべきだろう。


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