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趨勢的停滞は吹き飛んだ:ローレンス・サマーズ
2021年9月11日

ローレンス・サマーズ元財務長官は、過去18か月における大規模な財政政策が少なくとも短期的に趨勢的停滞を終わらせたと話している。


趨勢的停滞については、2桁の率の財政赤字、FRBの債券買入れ継続、記録的水準の求人を考えると、もはや存在しないと考えている。
アルヴィン・ハンセン(趨勢的停滞論の元祖)は1930年代終わりの経済について正しかったが、その後に第2次大戦が状況を変えたように、マクロ経済のすべてが過去18か月で変わったんだ。

サマーズ氏があるインタビューで、2013年に自ら唱えた趨勢的停滞(長期停滞)が終焉したと宣言した。

「通常の財政赤字のレベルにある時に、意図された貯蓄・投資間のおそらく3%のギャップから趨勢的停滞が生じると見ていた。
2桁の財政赤字では、趨勢的停滞が吹き飛んでも驚きではない。」

過剰とも見える莫大な財政政策が打たれたことで、趨勢的停滞は吹き飛んだとの見解だ。
停滞が吹き飛ぶのは悪いことではないが、もちろん代償をともなう。
その1つが将来のインフレ・リスクだ。
このインタビューでもサマーズ氏は丁寧に高インフレの可能性を心配する根拠を説明している。
(すでにこのサイトで何度か取り上げているので、その部分は割愛する。)

サマーズ氏の趨勢的停滞終了宣言の政策論議へのインプリケーションは小さくない。
多くのハト派論者たちは、言葉はどうあれ趨勢的停滞をハト派的政策継続の前提に据えてきた。
趨勢的停滞にあるから刺激策を継続しなければならない、場合によっては高圧経済を許容しなければならないといったようにだ。
ところが、その前提の継続に提唱者自身から疑問が呈されている。

ただし、サマーズ氏は中期的に趨勢的停滞に逆戻りするのかについては、現状の極めて低い実質金利の解釈と合わせて、「わからない」と答えている。
その上で、リスク・シナリオを話している。

もしもインフレ期待が4%を超えてくるなら、1960-70年代の失敗が繰り返されることを大いに心配するだろう。
さらに上昇するリスクをともないつつ、過酷な景気後退となる可能性が高く、深刻な懸念をもたらすだろう。
失業率が高まりスタグフレーションとなるかもしれない。

米ブレークイーブン・インフレ率(青:10年、赤:5年)
米ブレークイーブン・インフレ率(青:10年、赤:5年)

幸い中長期のインフレ期待は2%半ばで横ばいになっている。
1980年代半ば以降、インフレもインフレ期待も比較的低位にアンカーされてきた。
サマーズ氏の心配は、そのアンカーが外れることだ。
同氏は、インフレの状況が選挙や政治に大きな影響を及ぼすことに注意喚起している。


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