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資産価格の上げ下げ以上に心配すべきこと:レイ・ダリオ
2021年7月14日

ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が、くどくくどく為替リスクの脅威についてツイートしている。
本当にくどい。


ほとんどの人は、保有する資産の価値が上がるか下がるかばかりを心配する。
その通貨が上がるか下がるかを心配することはほとんどない。
それを考えてみなさい。

ダリオ氏が12日ツイートした。
同氏をよく知る読者ならお馴染みの議論だ。

史上最高のヘッジファンド運用者と謳われた人が「現金はゴミ」と言い続けている。
ここでいう「現金」とはドルをはじめとする(拡張的金融・財政政策を採る)先進国の通貨を指している。
こうした「現金」が今後価値を低下すると予想している。
その1つの根拠は、過去数百年の世界の事例研究だ。
《歴史は繰り返さないが、韻を踏む》との信念が背景にある。

この数年、米国ではリフレ・トレードが何度か流行りとなった。
その度に一翼を担ったのが、ダリオ氏が唱えるような通貨下落予想だ。
現在リフレ・トレードは巻き戻すようにも見えるが、ダリオ氏が提示した大きな絵の構図に変化はまったく見られない。

米国株を保有し株価が上がったから喜ぶべきなのか。
米国株やアメリカ人にとっての価値の物差しは米ドルだ。
とはいえ、世界の準備通貨ドルは物差しとして不朽と言えるのか。

現在、株式ほかの資産のパフォーマンスに対する心配と比べてどれだけ通貨の下落を心配しているだろうか?
もしもあなたが他の人たちと同じなら、あなたは為替リスクにほとんど気づいておらず、気づかないといけない。

ドル建ての資産価値が上がっても、ドルの価値が下がれば喜んでよいのかわからない。
それがダリオ氏のメッセージだ。
双子の赤字を抱える国の国民には比較的わかりやすいメッセージだろう。

一方、一人っ子の赤字しか抱えていない国の住人は、この点を受け入れにくい。
政府の赤字は膨らんでいるが、経常収支は黒字だ。
輸出はだいぶ減ったが、米国ほどではなく、海外子会社からの上がりは増えた。
こうした経済では、通貨安への呪縛が強く残る。

たとえば、通貨安になると株高になると考え、通貨安を望んでしまったりする。
これは、もちろん程度の問題だ。
円建ての株価が上がったからといって、ものさしである円が下がっていたのでは、本当に株の価値が上がっているのかわからない。
しかも、株式以外の資産の正味の価値(購買力)はどうなっているだろうか。
きちんと検証してみるべきだ。

また、実体経済についても、円安で喜べるマージンはさほど大きくないとの認識が優勢になっている。
異次元緩和で大きく円安ドル高が進んだ時、日銀は1ドル125円のあたりでブレーキを踏んだ。

ドル円(橙、左、逆目盛り)と実質実効為替レート(青、右)
ドル円(橙、左)と実質実効為替レート(青、右)

日銀がブレーキを踏んだ2015年と比べ、ドル円は円安が修正されたようにも見える。
しかし、実質実効為替レートはさほど変わっていない。
円安が修正されたように見えるのは、日米のインフレ差程度だ。
つまり、円はかなり円安の状態にある。

まだ、円安を脅威と考えるのは心配のしすぎだろう。
しかし、この実質実効為替レートが中央回帰するのか、趨勢的低下傾向を示すのか。
それを悩む時が、そう遠くないうちにやってこないとも限らない。
少なくとも日本の投資家なら、せっせと自国通貨を外貨に換える人の心理が理解できるはずだ。


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