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貨幣的インフレこそ真のリスク:レイ・ダリオ
2021年3月21日

ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が、長期債務サイクル終期に見られる現象を解説し、起こりうる「貨幣的インフレ」について警告している。


サイクルの終盤になると、多くの債務が発行されマネタイズされる。
これが長期債務サイクルの終わり近くだ。
それが一連の問題を生む。

ダリオ氏がBloombergで、長期債務サイクルの終期に起こることを警告している。
同氏の予想が当たるかどうかは別として、これまで抽象的にしか理解されてこなかった同氏の考え方が徐々に具体的なイメージを帯びてきている。

たくさんの債務が発行され、それらが良いリターンを与えないと、インフレのために債券は(実質)マイナス・リターンになる。・・・
これら債券に対して十分な需要がなくなる。
これが起こると、今起こっているように、金利が上昇し、中央銀行はジレンマに陥る。

この天才の表現は抽象的・天才的であるがゆえに、正しい理解が難しい時がある。
しかし、同時にダリオ氏はくどく、そしてしつこい。
この数年、同じことを無数に繰り返してきた。
冗長な話を何度もするうちに、少しずつ理解されるようになった。
特にパンデミック以降、現実の方が抽象論にすり寄ったことで、凡人にも理解しやすくなっている。

ダリオ氏は、FRBがじきに直面するジレンマを予言する。

金利を大幅に引き上げるか、さらに貨幣増発により債券を買って金利を引き下げるか。
貨幣増発により債券を買って金利を引き下げれば、実質金利が下がり、ドルの減価が加速し、また、インフレ圧力が増す。

特に、後者が選択される場合、インフレ上昇がスパイラルに起こりうることになる。

ダリオ氏は、状況を変えるのは容易ではないと言う。
そうするためには財政支出を減らす必要があり、政治的な困難をともなうためだ。
同氏は、今年の終わり頃から問題が顕在化し、状況が困難になると予想する。

経済成長が強まり、インフレが上昇し、金利が上がるだろう。
そして(債券の)需要が不足するだろう。
だから、注意すべき兆候は、経済・インフレが強い中で(FRBが)債券を買い入れる必要に迫られるかだ。

ダリオ氏は、結局はFRBが高い経済成長でも金融緩和を続けると匂わせている。
2%の平均物価目標を盾に、高成長でも緩和継続を正当化できるためだ。
もしそうなれば(程度・確度はわからないが)インフレのスパイラルに発展するリスクを冒すことになる。
ダリオ氏は、インフレには2種類存在する点を強調した。

「私たちが慣れているインフレとは、経済が過熱し供給制約を生じ、既存の供給能力を需要が上回り、物価が上昇するものだ。
失業率が低くなるなどだ。
もう1つ貨幣的インフレと呼ばれるものが、スタグフレーションの時に起こる。」

世界的にリフレ政策が容認されている理由は、そこで求められているインフレが前者にあたるためだろう。
前者のインフレとはGDPギャップがなくなることで起こるものであり、好景気との裏返しだ。
それに対し、ダリオ氏が「貨幣的インフレ」と呼ぶものは景気停滞と共存するインフレだ。
このタイプではフィリップス曲線などの議論さえ無縁になる。
実体経済というより、市場心理に強く影響される面もある。
これを望む人はおるまい。

現在、債券や現金から資金が流出して株式ほかの投資資産に移動している。・・・
貨幣的インフレが起こりうる。
真の大きなリスクは貨幣的インフレだ。
貨幣的インフレは、債券の買い手より売り手が多くなり、莫大な貨幣増発が必要になることで起こる。

ダリオ氏の危惧が実現すると決まったわけではない。
少なくとも世界は過去10年ほど、マネタリーベース拡大でたいしたインフレが起こらないことを経験してきた。
問題は、マネタリーベースではなくM1などのマネー拡大でも同じことに終わるかだ。
《今回は違う》は必至ではないだろうが、世界は過去と比べていつになく《今回は違う》になりそうな環境にある。


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