海外経済

財政赤字拡大の黒幕:ピーター・シフ
2019年11月17日

ユーロ・パシフィック・キャピタルのピーター・シフ氏があいかわらず過酷なFRB批判を展開しているので、割り引きながら聴いておこう。


もちろん景気後退に直面してFRBが利下げしても、いつも経済の助けにならない。
景気後退とはバブルをリストラするものであり、景気後退こそが経済を救うものだからだ。

シフ氏がFOX Businessで、景気後退期の追加緩和余地のなさについて尋ねられて答えた。
同氏の独特の考えはキャスターの想像をはるかに超えるものであったようだ。

景気後退期に経済刺激策を講じることが「助けにならない」というのは言い過ぎだろう。
あまりにも急激な経済悪化で経済構造が不必要なまでに縮小してしまうのを防ぐ効果もある。
何より、不必要なまでに追い詰められ困窮する人が出れば、それを助けるのは当然のことだ。

シフ氏があえて極論を続けるのは、金融緩和が行きすぎているとの基本的認識があるためだ。
金融緩和が過剰を生み出し、その過剰の後始末のため再び強力な金融緩和が講じられ、過剰も大きくなる。
こうした見方に一定の説得力があるからこそ、シフ氏のような人たちが主要メディアで活躍の機会を与えられ続けている。

シフ氏は、追加緩和の選択肢の1つとなりうるマイナス金利政策についても強く批判する。
マイナス金利は欧州経済のみならず、米経済をも危機に陥れかねないという。

皮肉なことに、トランプが望んでいるマイナス金利は実際には欧州経済を損ない、米経済を押し上げるのに一役買っている。
米国に流入する資本があるのは、ユーロ圏のマイナス金利から逃避するためだ。
それが米資産価格を押し上げ、人為的に消費支出を加速させている。
だから、米経済は短期的にはよく見えるが、結局は大きな下落のお膳立てをしているだけなんだ。

シフ氏の中央銀行批判はあいかわらず過酷だ。

「FRB議長は、米経済が良好といっている。・・・
米経済がどんなに危なくなっても常に、FRB議長は『すべてがすばらしい』というと思っていい。」

シフ氏は投資家に対し、FRBのいうことを鵜呑みにすべきでないと警告する。

「1年前にパウエル議長は、利上げとバランスシート縮小を継続すると言っていた。
やったのは真逆のことだ。
3度も利下げし、バランスシートは正式にQEをやっていた頃より速く拡大している。」

シフ氏のFRB批判は金融政策だけでなく財政政策にまで及んだ。

「パウエル議長は、国家債務が持続不可能で問題だと言った。
彼は、その問題を可能にしているのがFRBの役割であることに目を向けない。
FRBが財政赤字をマネタイズしてすべてを可能にしているのに、どうしてFRB議長が大きな財政赤字について議会を批判できるんだ。
もしもFRBがその職責を果たしていれば、金利は上昇し、議会は歳出削減を余儀なくされていたはずだ。」

シフ氏は最後にパウエル議長に対する採点を求められ「『不可』をつけるしかない」と答え、出演者の笑いを誘った。
ポール・ボルカー元議長より後の歴代議長の中で、おそらくパウエル議長はもっともシフ氏が好むタイプの人物であるはずだ。

パウエル、イエレン、バーナンキ、グリーンスパン、全員『不可』だ。
パウエルだけに不公平はできない。
誰も私の講義で単位はとれない。

シフ氏の政府・FRB嫌いは、リバタリアン的な思想から出てきたものであり、その思想は父親譲りのものなのだろう。
いわば、こうしたきつい論評はお家芸でありキラー・コンテンツだ。
すべては真に受けず、適当に割り引きながら、大切な部分を読み漏らさないようにすればいいのだ。


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