国内経済

財政悪化が円金利を低下させる:小林慶一郎教授
2019年2月26日

慶応義塾大学の小林慶一郎教授が、財政破綻の可能性も含めた日本の厳しい財政状況を解説している。
その中に、まじめに財政・金融をシミュレートした人だからこそ口にできる問題意識が見られ、興味深い。


「財政破綻の現象が起きたら、政府が巨大な課税を個人や企業の資産に対して掛けてくるだろう。
・・・
結果として、個人も 企業も貯蓄をすることをためらうことになり、資本の蓄積が阻害され経済成長率が下がる。
非常に小さな確率でも財政破綻の可能性があるというリスクがあるだけで経済成長率が下落するのである。」

小林教授が証券アナリストジャーナルで書いている。
財政悪化によるいわば非ケインズ効果に言及したものと捉えてよいのだろう。
財政悪化で潜在成長率が低下するという話は、比較的多くの人から受け入れられている話だ。

潜在成長率が下がれば何が起こるだろう。
成長率が下がった経済はさほどお金を必要としなくなり、金利が下がるかもしれない。
低成長時代の日本が辿った、まさにその道だ。
財政悪化は国債保有のリスクを増やすはずなのに、なぜか日本国債の利回りは長期も短期も低下してきた。
これを指して、日本国債は安全資産だ、などという人までいる。
これはどう考えても不合理だ。

小林教授は論文の中で財政・金融のシミュレーションを行っている。
そこで、ドキリとする自問をしている。

もう一つの仮定として、財政破綻が起きた場合の国債の償還はどうなるのだろうか。

財政破綻したら、国債はデフォルト(テクニカル・デフォルトを除く)となるのか、そうならないのかを問うているのだ。
なぜかと言えば、そうならない可能性が十分にあるためだ。

戦後の大蔵省は国債をデフォルトせず償還した。
国債を債務不履行にしないということが日本のこれまでの財務省、大蔵省のやり方だ。
財政破綻が起きた場合には民間の資本ストックには課税されるが、国債は償還される。

戦後、日本政府が財政立て直しのために行ったことに預金封鎖・新円切り替え財産税がある。
預金封鎖と新円切り替えで民間の経済主体の財産を把握し、財産税で徴税したのだ。
これにより民間の資本ストックから政府に富が移転し、財政再建に役立った。
将来、こういうやり方が繰り返されるなら、国債はデフォルトしないことになる。

また、日銀による国債買い入れが常態化した今では、もう1つのやり方がある。
国債を最後の1円まで日銀が買い入れることだ。
これは、インフレを助長するから、インフレによって国の債務を軽減するやり方の1つと言える。
あるいは、過度なインフレが困るなら、戦後と同様、資産税等を併用することになろう。

問題は、こうした具体的シナリオが円金利にどう作用するかだ。

国債と民間の資本ストックのどちらが安全か考えると、財政破綻のリスクが高まれば高まるほど国債の方が安全と考え、その結果として国債の金利が下がる。

なんという皮肉だろう。
仮に日本政府の財政破綻が逃れえない運命だとしても、その日(小林教授のシミュレーションでは2030年頃)が来るまでは国債の利回りは上昇しないのだ。
むしろ、非ケインズ効果を通して民間経済の足をひっぱることになるのである。
これがいっそう財政規律を緩ませる要因になるのは言うまでもないだろう。


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