国内経済 政治

豊かに成熟した日本:榊原英資教授
2019年9月16日

ミスター円こと青山学院大学 榊原英資教授が、日本は成長一本やりでなく、よりよく成熟する道を模索すべきと話している。
過度に経済成長を求めれば、よくない結果が起こりうるという。


日本経済は成熟しただけなのです。

榊原教授が日経ビジネスで、持論となっているある達観を語っている。
成熟した経済で経済成長率が下がるのは当然のことと指摘。
日本は「巡航速度」を維持しており不安はないと話している。
いつまでも経済成長を至上目的とせず、よりよく成熟した経済・社会を目指すべきという趣旨だろう。
日本の約500万円の1人あたりGDPが米国の約6万ドルより低い点についても、平均値の魔法があると示唆している。

「平均的な日本人の暮らしは、平均的な米国人の暮らしよりずっと豊かだと思いますよ。
・・・あちらは格差が大きい。
トップクラスの1%に所得が集中しています。
中央値の人の暮らしを見れば、日本が豊かだと思います。」

これは貧困層を見ても同じことが言えるだろう。
日本にも胸を割かれるような貧困の苦しみは存在する。
しかし、欧米ははるかに厳しい。
失業の問題も、比較的労働市場が好調な現在は日米欧とも小康を迎えているが、景気後退となれば、再び欧米の過酷さが際立つだろう。
日本は就職氷河期をかなり前に脱したが、欧米ではまだかなり怪しい。

日本の社会・経済がかなりいい状態というのはそのとおりなのだろう。
ただし、低成長を受け入れるというありようは、正しい道だとしても、なかなか社会・組織からは受け入れられにくいところがある。
猿山とは拡大することを目標に掲げないとなかなかうまくまとまらないものだからだ。

榊原教授は、日本が低成長だとしても、新興国の成長を取り込むことで活路が開けるはずと示唆している。

こうした国々の成長が大きいならば、日本企業が進出して、高い成長を享受すればよいのです。

これは産業論・企業戦略論としては正しいだろうが、包括的な政策論にはならないだろう。
この命題には、日本に住むほとんどの自然人の食い扶持に関する解決が含まれていないからだ。
強いて敷衍するならば《日本人は投資家になれ》ということだろうか。
これは以前に米国で起こったことと似ているのかもしれない。
米国を見る限り、日本人のかなりの数が投資家として豊かな生活を送るのは難しいだろう。

榊原教授は、人民元についても言及している。
米国が拡張的な金融・財政政策を採り、外交姿勢でも不人気になるにつれ、米ドルの準備通貨としての地位が揺らぐのではとの観測も出始めた。
一方、中国はかねてから人民元を国際的な決済通貨・準備通貨にしたいと願ってきた。

元が国際通貨になるには、まだ50年はかかるでしょう。
まず国内で金融を自由化する必要があります。
・・・
ドルの優位は簡単には崩れません。

現時点で、人民元は将来ドルにとって代わる可能性のある通貨の筆頭だろう。
しかし、それにはまだ相当に長い時間がかかる。
為替市場・金融市場が自由化されていない国の通貨は、基軸通貨とはなりえない。
(唯一の例外は、中国が世界のほとんどを支配する場合だけだろう。)

その一方で、教授の言う「50年」はあまりにも長い。
「国際通貨」の定義にもよるが、仮に円を国際通貨と呼ぶなら、10-20年で追いついてくる可能性は十分ある。
何しろ今や日本は、最大規模の金融緩和策によって為替市場・金融市場を脱自由化しているのだから。

榊原教授は現状を楽観している。

「大きな不安はありません。
悲観する理由はないでしょう。
一般の国民も大きな不安を抱えているようには見えません。」

この楽観の真価が問われるのは今ではあるまい。
それは、次の景気後退期であろう。


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