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豊かな引退生活のためにユリシーズ契約を:ダン・アリエリー

心理学者・行動経済学者のダン・アリエリー教授が、引退後の生活設計やそのための財産形成における落とし穴を、行動経済学的視点からアドバイスしている。


以前、引退時の給料と比べてどれだけ引退後の生活に必要か尋ねたことがある。・・・
ほとんどの人は70-80%の間だった。
『どうやってそんなにすぐその数字になったの?』と聞くと、答はなかった。

アリエリー教授がCNBCで、引退後の生活設計について行った調査の結果について紹介した。
70-80%という回答について確たる根拠を持つ人はいなかったのだという。
誰かがそうした数字が適切と言っていたのの受け売りだったのだ。

そこで、アリエリー教授は、直接答を聴くのではなく、かわりに根拠の部分を聴くことにしたのだという。
異なる被験者のグループに引退後の生活を思い描かせ、それから必要な金額を計算してみたという。

結果は、彼らは引退時の給料の約130%も必要としたんだ。
なぜかというと、仕事というのは実際にとても安上がりなものだからだ。

アリエリー教授は、1日8時間拘束され、コーヒーまでつく生活は、とても安上がりだという。
ところが、ひとたび引退すれば毎日が週末になる。
散歩やテレビのようにお金のかからないことだけで満足できる人は少なく、引退後の生活は高くつくことになるという。
教授は、引退しなければ消費支出も少なくて済むと指摘した。

角度は少し異なるが、筆者も引退した先輩方から聞いたことがある。
引退すると、交通費が高く感じられるようになるそうだ。
郊外に住んでいる人なら、都心に出てくれば往復2,000ほどかかるかもしれない。
小さな買物なら割に合わないし、大きな買物ならいっそう出費が嵩む。
そうして、マインドが萎んでいってしまう。
こんな変化は現役時代には予想していなかったという声をよく聞く。
何かと引退生活はお金がかかる。

私たちの選択肢は大きく2つ。
アリエリー教授が示唆するように、引退せずに一生仕事に拘束されて安上がりな生活を送るか。
130%の支出を賄えるだけ、なんとかしてお金を貯めておくか。
アリエリー教授は、後者の場合、誰しも不得手とする振る舞いを貫徹する必要があるという。

その振る舞いとは、将来のために現在を犠牲にすること、だ。
極端な例で説明するなら、悪くない給料を稼げている人が、現在の生活を赤貧のごとく切り詰め、適度に投資をしておけば、老後はそこそこ余裕のある生活が送れるだろう。
でも、現在の生活を切り詰めるのはやはりつらい。
心が折れる。
挫折する。

ではどうすればよいか。
アリエリー教授はいくつかやり方があるとしつつ、「ユリシーズ契約」と呼ばれる仕組みを奨めている。
ホメーロス『オデュッセイア』の中で、ユリシーズ(オデュセウス)はサイレーンの歌声に惑わされることがないよう、予め自分をマストに縛り付けてもらい、他の人には耳栓をさせて、難を逃れた。
ユリシーズ契約とは、よりよい行動のために外的な力を用いることを指す。
何か自分を縛りつけるための仕組みが必要とアリエリー教授は説いている。

将来のために現在の消費の誘惑を克服するのを助けるために、こうしたやり方が必要だと思う。
確定拠出年金はとても大きな助けになるだろう。・・・
将来の自分が助けにならないとわかっているなら、今何かこれからの自分を強いることをしておこう。


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