豊かさを意味しない米雇用統計の真実:ジェフリー・ガンドラック

新債券王ことDoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が、手放しには喜べない米経済の真相を語っている。
また、米長期金利上昇のための要件にも触れた。


「2018年はあるナラティブが始まった年となった。
世界の景気が同時に拡大し、世界中ですべてが完全であることのメリットを享受するというものだった。
問題が起こると、すべてが調和している場合、それは単一の方向にしか動かなくなる。」

ガンドラック氏がBarron’sに話した。
昨年2018年の初め、実業界や市場は高揚していた。
景気や市場を強力に刺激する減税・歳出拡大法案が米議会を通過したからだ。
その期待を存分に織り込んだ景気・市場は、ある意味落ちるしかなかったのだ。

ガンドラック氏は、景気の不調が住宅や銀行以外にも波及している可能性を示唆した。
最近の経済統計が強弱マチマチの内容になっているとし、ISM製造業指数、建設セクターでのレイオフ、住宅ローン申請件数などで心配すべき点が出ているという。
極めて強いとポジティブ・サプライズを誘った雇用統計でも、心配すべき点が見られたという。

「すべての新規就業者数は55歳以上の人たちで、20-54歳の層を見ると実質的に雇用は失われている。
・・・労働参加が増えており、すべて高齢層だ。
これが暗示するのは、おそらく2018年に見られた低金利と難しい投資環境が、引退したい人たちに引退をやめて再就職しようという動機を与えたのだろう。」

経済において労働力の供給が増えることは悪いことではない。
供給制約を解決する1つの要素だ。
しかし、昔なら引退できたはずの人が引退できなくなったとすれば、仮にそれがGDPの増大要因となったとしても、豊かさの増大要因とは言えない。
ガンドラック氏はこれを「経済が強い」というべきではないとし、同様の例として1960年代の専業主婦を挙げた。


「多くの既婚女性が子供の面倒をみたいために仕事をしていなかった。
それが後に働くようになった。
夫の収入だけでは家族を養えなかったからだ。」

ガンドラック氏は、これは強い経済を表すものではなく、賃金上昇の不足を表すものだと指摘した。
過去の四半世紀、実質賃金(インフレ調整後の賃金)は全く上昇していないとし、その証拠はたくさんあると話している。

米債券市場について尋ねられると、国際的な波及効果が強く効き始めていると分析した。

「通常米10年債利回りは名目GDP成長率と同水準にあるものだ。
米国の名目GDPは5.5%だ。
だからみんな10年債利回りはもっと上昇するはずと考える。
しかし、ダブルラインで注目している、とても有効な数字は、もはや名目GDPではない。」

ガンドラック氏によると、競合する世界の金利、特に独金利に注目すべきし、従来から主張してきた
 米長期金利≒(米名目成長率+独長期金利)÷2
の関係を再び説明した。

長期金利が名目GDP成長率とすり合うとの考えは、ざっくり言えば経済が欲する資金の対価が金利になるとの概念である。
しかし、長期金利は実際にはそれよりはるかに低い。
海外の安いマネーが米国に流入するためで、これが米金利を押し下げている。
ガンドラック氏の提示する不思議な方程式は、そうした概念を単純に表したものになっている。

「独10年債利回りは0.15%。
名目GDPを約5.4%とすると、独利回りと平均をとって2.70-2.75%となる。」

なるほど、悪くない精度だ。
ガンドラック氏はこの式から逆に、米金利上昇の要件を導き出している。

だから、米10年債利回りが上昇するためには、おそらく海外での利回り上昇が必要なんだ。


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