投資

詐欺の黄金時代をもたらしたのは誰?:ジム・チャノス
2020年12月5日

キニコス・アソシエイツのジム・チャノス氏が、経済政策がもたらした危うい市場環境を理由に、現在を「詐欺の黄金時代」と呼んでいる。


退屈で単に割高なだけでなく大きな問題を抱えているように見える様々な企業が見られる。
市場はそれをほとんど気にかけていない。
そういう企業が2020年にはしばしば最良のパフォーマンスを上げた。

チャノス氏がBloombergで、企業の中身とは関係ない動きをする株式市場について警戒した。
これには中央銀行が果たした役割が大きいという。
ゼロ金利もさることながら、市場心理に与えた影響が大きかったという。

「投資家はFRBプットを与えられていると感じることで、ダウンサイドがない、あるいはほとんどないと感じる状況に戻ってしまった。
これは危険な危険な状況だ。
以前もあったことで、2007年のピーク、2000年のピークだ。」

かつてグリーンスパン・プットとバーナンキ・プットがドットコム・バブルと住宅バブルの発生を助長した。
今は再びパウエル・プットが投資家の警戒心を取り払ってしまった。
市場参加者が損をしそうになっても必ず政府・中央銀行が助けてくれると強く信じられている。
チャノス氏は、こうした状況を「とても危険な状態」と指摘した。
もしもその思い込みに「変化があれば、みんなボートの片側から反対側に一斉に移動する」ことになりかねないからだ。

みんな極度に警戒心を解いた状況は、チャノス氏のようなショート・セラーには2つの意味で強い逆風になる。
1つはショートがなかなか実らないこと。

「通常は2/3のポジションが正しいとなり、時には70%も当たることがある。
今は逆で・・・価格について1/3が当たり、2/3が間違いになっている。」

大学で講義も持っているチャノス氏は、ショート・セラーのリターン実績について紹介している。
ファンダメンタルズに基づくショートは、過去35年にわたり急速な上げ相場でもリターンを上げてきたのだという。
ところが、2018年のクリスマス以降はリターンを上げるのが難しい「とても特殊な状況」になったのだという。
2018年のクリスマス、FRBは理屈の整合性より市場救済を優先し金融政策を大転換した。
あわせて、小口投資家の投機熱が回復したのだという。
これがショート・セラーをリターンの面で苦しめた。

ショート・セラーの災難はこれだけでない。
ショート・セラーのファンドにお金が集まらなくなり、むしろ資金流失が起こりやすくなった。
理由はファンドのリターンだけではない。

投資家は市場ではなくFRBを保険とみなしている。
彼らは私たちと同じものを見ているため、ファンダメンタルズ・ショートにかなり興味を持つが、肩をすぼめて『でも要らない』と言うんだ。
政府が守ってくれて、金利は人生で決して上昇せず、市場が下がれば政府が急いで助けてくれる。

投資家はショート・セラーのファンドを保険のように見る場合がある。
こうしたファンドがしばしば市場の急落とともにパフォーマンスを高めるからだ。
ところが、今ではFRBが保険の役割を果たしている。
図らずして官が民業を圧迫している構図だ。

二重苦に苦しむショート・セラーだが、チャノス氏はへこたれていない。
エンロンの不正会計を暴いて有名になった同氏だが、企業不正等によるショートのチャンスはドットコム・バブルや住宅バブルの頃よりはるかに多く存在するという。

金融市場における詐欺の歴史のコースで私が教えているのは、詐欺のサイクルが金融サイクルにラグをともなって追随するということだ。
強気相場が長くなればなるほど、たくさんの人が不信感を忘れ、真実にしてはあまりにも良すぎることを信じ始める。
明らかな詐欺、詐欺の証拠があるにもかかわらず市場が買い意欲を持ち続けているという意味で、おそらくかつてないほど顕著になっている。

チャノス氏は、不正の証拠が提示されているのにそれが見逃されていた例として、独ワイヤーカードの例を上げた。
1年以上前からFTが不正を報じ、それなりの証拠が積み上がる中で、独政府や金融市場は同社を擁護し続けた。
同社自らが認めるまで、国を代表するフィンテック企業として扱われ続けた。
チャノス氏は、以前なら、根拠のある疑いがかけられた銘柄は急落するものだったが、今はそうならないと指摘する。
かつてない現象だという。

私は現状を『詐欺の黄金時代』と呼んでいる。・・・
多くの場合、それら企業は不正を認めるまでアウトパフォームする。・・・
みんな、犯罪者が犯罪を自白するまで犯罪者を信じたがっているんだ。
市場は極めて投機的だ。


-投資
-,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 その他利用規約をご覧ください。