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グッゲンハイム スコット・マイナード 解決法は投資家が富を失うこと:スコット・マイナード
2020年3月29日

グッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナード氏が、コロナ・ショックの経済・市場への影響をより大きな絵の中で解説している。


8年ほど前、私は、政策立案者が金融危機解決のために行った悪魔との契約について書いた。
こうした政策の悲惨な結果として、そのつけが今回ってきたのだろう。

マイナード氏が、自社ブログで、コロナ・ショックによる市場の動揺について大局的な見地から俯瞰した。
同氏は現在が「大きな債務のスーパー・サイクルの最終盤」だという。
そのスーパー・サイクルを生み出した1つの要因は経済学だ。

「ケインズ後の時代、景気停滞に対処するための標準的な政策とは、政府が財政刺激策と金融緩和を強化することで需要低下を一時的にオフセットすることだった。
この処方箋は、比較的小さく頻度の少ない鈍化に対するものだった。
それが最終的にもたらしたのは、企業・家計が債務を増やし現金を減らし、経済へのどんなショックによる過酷な結果も政策立案者が抑制してくれると確信することだった。」

金融緩和が行われているなら、安いお金を借りるのが合理的な判断になる。
安い金利でお金を借りて自社株買いを行えば、株主の利益になる。
たとえ何か困難が起こっても、政府・中央銀行が救ってくれるのなら、心配はいらないことになる。
そして、世界金融危機が起こる。

「危機の後、各国政府もまた債務を増やした。
中央銀行は成長を支えるため、継続的に(政府)債務を買い入れ、金利を低位に維持しなければいけなかった。」

企業・家計だけでなく政府・中央銀行も債務漬けになった。
経済回復の主役が民間から公共セクターにバトン・タッチしたのだ。
そこにコロナ・ショックが起こった。
今、政策立案者は10年前と同様の解決策を模索している。
しかし、金融・財政政策ともに、10年前から発動した分もまだ巻き戻していない。
今回は、かなり伸び切ったところからのスタートになる。

マイナード氏は、前回と同じやり方に疑問を呈している。

最終的な政策の目的は、パンデミックが終わる時に雇用を提供すべき産業を助けることで経済を安定させることだ。
こうした企業のレバレッジの水準を見る限り、多くの企業でキャッシュフローのギャップが大きすぎて、債務を返済するのは不可能だ。
・・・これら企業への貸付を増やすことは、過度なレバレッジによる長期的な問題を累積させるだけで、長期的により破綻しやすくすることになる。

マイナード氏は、社会主義への移行を除くなら、解決法は抽象的には1つに帰結するという。
「投資家から債務者への富の移転を増やすこと」だ。
借金が増えたことが問題なのだから、これは当たり前のこと。
問題はそれをどう行うかだ。
マイナード氏は3つのやり方を挙げる。

  • 債務減免: 時間とコストがかかるほか、連鎖破綻につながる。
  • マイナス金利: 準備(キャッシュレス化)に時間がかかる。年金・保険法制の変更なども必要。
  • 通貨価値低下

マイナード氏が現実的と考えているのは3つ目の通貨価値低下。
インフレで借金の正味価値を減らすというやり方だ。
これは常道でもあるし、実現するならスマートなやり方なのだろう。

みんなインフレは死んだとして、こうした政策は機能しないと信じている。
物価水準をどううまく上昇させられるかとの問いは、能力というよりはコミットメントの度合いによる。
・・・輪転機を速く回すことで、世界の中央銀行は、貨幣の流通速度の低下よりも速く準備預金を供給しなければいけない。

米国と日本は違う。
米国は日本とくらべるとインフレになりやすい経済だから、マイナード氏の意見は正しいのかもしれない。
しかし、異次元緩和以降に日本で起こったことは、ずいぶんと違うことだった。
コミットメントではインフレは起こらず、インフレとは貨幣現象と割り切れないものだった。
マネタリー・ベースを増やしても思うようにマネー・ストックは増えなかった。
米国が日本に次いでこの壮大な社会実験に突き進むなら興味深く見守るべきだ。

マイナード氏は、リフレの匙加減の難しさを主張する。

「供給される貨幣が少なすぎれば、ローンの担保になっている資産の価格はスパイラル的に低下する。
供給される貨幣が多すぎれば、インフレが制御を失う。」

私たちは十分に気をつけないといけない。
ここで語られているのは、大災害を引き起こさないための究極の選択だ。
決して投資家が幸福になるための道ではない。
投資家はインフレが起これば、購買力を失う。
「投資家から債務者への富の移転を増やすこと」とは、概ね投資家にとっては損失を意味する。

今後はドル安になるのではないか、これからはリスク・オフで円安になるのではないか、との憶測がメディアに溢れている。
そういう憶測とは、こうした消去法の結果、生まれてきたものなのだ。


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