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見過ごされている日本経済・市場のチャンス:イェスパー・コール
2020年1月6日

ウィズダム・ツリーのイェスパー・コール氏が、2020年の日本経済・市場に強気の見通しを述べている。


日本は金メダルの年を迎えつつある。
財政刺激策による公共需要、企業投資や消費支出による民間需要が実際に極めて堅調に推移している。
だから、経済成長に対するコンセンサスはあまりにも低すぎる。
日本経済は2020年、容易に1.5-2.0%を達成するだろう。

コール氏が2日Bloombergで、今年の日本経済について強気の予想を披露した。

日本経済研究センターによるESPフォーキャスト調査(12月調査)によれば、2020年度のGDP成長率予測は0.49%。
コール氏のいう水準は、それより1%超も上の水準だ。
同氏が理由に挙げたのは、日本経済に新たな変化が見られる点だ。
それは、日本企業による国内事業への再投資だ。

「中国やインドなどに工場を建てるだけでなく、日本国内でもそうしている。
国内で資本形成が起こり、資本財の増強が図られている。
その結果、生産資本・人的資本の両方に企業の投資が行われ、生産性が上昇し、購買力が向上し、利益が上向き始めている。」

コール氏は、日本企業の競争力が高まっているといい、「良いデフレ」の状態が実現しつつあるという。

「新たな資本的支出の恩恵、新たな国内プロセスの恩恵が得られようとしている。
その結果として、企業が実際に新たな利益を上げる中で、価格が下がっている。
すべての人にとってウィン・ウィンの状況だ。」

賃金が上がり、それが転嫁されて物価が上がり、物価上昇分を補うために賃金が上がり・・・
こうした単なる押し付け合いではなく、生産性向上が押し付け合いを抑える役割を果たしている。
これが労使間のゼロサム・ゲームをポジティブサム・ゲーム(ウィン・ウィン)に変える可能性を生み出す。

コール氏は「よいデフレ」である限り日銀は喜ぶはずだし、2%物価目標が未達であることに文句をいう人もいないと言い切る。
むしろ、問題の本質は、物価と対をなす賃金にあると指摘する。
賃金が物価上昇に追いつかないなら「良いデフレ」論も成り立たなくなってしまう。

「逼迫した労働市場が賃金の購買力を大きくし始めるようなモメンタムが必要だ。
今後数か月はそれが安倍首相と政権の焦点となるだろう。
毎年4月は春闘があるが、昨年はベアが2%未満と期待外れだった。
今年は、少なくとも3.0-3.5%になると私は期待している。
そうなれば、ミスター/ミセス・ワタナベがその購買力を解き放つと確信できるようになるだろう。」

コール氏は2020年の日本経済についてとことん楽観的だ。
もっとも、内外に不確実性が残る中、これほどのベアが実現するかは大いに疑問だ。
そもそも労組側がそうした水準の要求をするとも思えない。

コール氏は、アベノミクスがゆっくりと着実に構造面の成果を上げていると評価する。
自民党が2020年度税制改正大綱にM&A減税を盛り込んだ点を例に挙げ、経済とともに投資のチャンスになると話した。

「これは小さな一歩だが、経済・構造変化への波及効果を及ぼしつつある。
・・・
今年2020年はM&Aブームこそ投資家が注目すべき需要テーマになると考えている。」

日銀の金融政策については、コール氏は(物価より)為替を重視する見解を示した。

日銀の行動の引き金となりうる1つが円高ドル安だ。
もしもドル円が95-100円になれば日本の経済、特に企業収益の見通しにブレーキをかけてしまう。
ほとんどの日本企業の想定レートは105円前後だ。
そこを切ってくると、日銀の赤信号が点滅を始める。

多くの市場関係者が、今年もドル円相場が動きにくいと予想している。
もしそうなるなら、日銀の出番は今年も少なそうだ。

キャスターは、やや古臭いロジックで日本経済を議論したかったようだ。
あたかも日本がまだ輸出依存経済であるかのように見立て、為替や輸出産業について議論したかったように見えた。

しかし、コール氏はきっぱり「日本経済の輸出サイドには興味がない」と言い切っている。
輸出動向は単純であり、日本固有の議論でないためだ。

「中国が回復し7-8%成長を遂げるかの賭けになる。
もしそうなるなら、日本の資本財輸出も追随し、恩恵を受けるだろう。
でも、それは世界経済への賭けであり、私に聞くことではない。」

何と冷淡、しかし冴えた一言だろう。
日本の輸出産業へのエクスポージャーが本質的にどのようなリスクへのエクスポージャーかを指し示している。
もちろん精緻に見れば、輸出産業のリスクと中国リスク、世界経済のリスクとは完全には一致しない。
しかし、同期しているのは事実だし、そうだとすれば、世界経済のリスク以外の部分に目を向ける意味は大きい。
さらに、日本の輸出企業の多くはその事業構成がすでに輸出一辺倒でなくなっている。
為替や輸出産業で日本を語る意味は徐々に減ってきている。

変なこと、大げさなこともたくさん言い張るコール氏だが、日本経済への愛情あるまなざしは共感を誘う。

私は日本の国内産業に興味を持っている。
そこにこそ動きがあり、誤解があり、投資家を儲けさせるギャップがある。
・・・
私が言っているのは、日本の国内産業がとてもポジティブな上昇モメンタムを持っており、それが多くの利益をもたらしうる点だ。

さて、今年2020年は日本株の年となるのだろうか。


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