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ハワード・マークス 良い絶対リターンを求めるべき:ハワード・マークス
2021年9月15日

オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏は、長い間金融市場が中央銀行によって操作されていることの弊害を指摘し、投資家に注意を喚起した。


投資家はみな自由市場を信じていると私は確信している。
米国株市場に投資する社会主義者・共産主義者はおそらく多くない。
しかし、もしも自由市場を信じるなら、多くの場合そこにある信念とは、自由市場では私たちが最高・最良の使途と呼ぶもののところに資産が移動するというものだろう。

マークス氏がThe Investor’s Podcast Networkで、自由市場への信念を語った。
自由市場は経済・社会において、資源を効率的に配分し、さらに、リスク/リターンについてもうまく勘案してくれるという。
だから、自由市場を大切にすべきと言いたいのだろう。

マークス氏は、その自由市場が2009年の世界金融危機以来、失われていると嘆く。
政府・中央銀行が金利を決める状況が続いており、これが歪みを生み出しているという。

ほとんどの人が今日の金利をあるべき水準より低いと主張している。
適切な水準より低い金利が何を意味するかといえば、借り手に補助金を与え、貸し手を罰するということだ。
レバレッジの活用が後押しされ、貯蓄には妨げとなる。

マークス氏は、中央銀行の仕事を「経済を操作すること」と表現する。
借り手やリスク・テイカーの利益のために、預金者や年金加入者が罰せられていると指摘する。
あからさまには言わないものの、資源が不適切に配分され、社会的不公平が生じていると言いたいのだろう。

その結果、資産価格には何が起こっただろう。

「現在の低金利を前提にすれば、すべての資産はフェア・プライスに見える。・・・
今日の金利は史上最低水準にあり、単純に考えれば、資産のバリュエーションは史上最高水準にあることになる。・・・
私たちが投資家として下す判断とはすべて相対的な判断だ。」

時系列で見れば極めて高い水準にある資産価格も、超低金利を前提とすれば「フェア・プライス」に見えてしまう。
いうなれば、絶対的には割高だが、相対的には割高でないという見方だ。
最近このロジックを用いる識者が増えている。
中でも、アスワス・ダモダラン教授の相対思考の肯定は明解だった。

「私たちは歴史に対して投資するのではない。
現在そこにあるものに対して投資するのだ。」

ダモダラン教授のこのメッセージは一見説得力があるように見えるが、完璧ではない。
過去のあらゆるバブルにおいて、絶対的(過去との比較)には高い資産価格があった一方、相対的(同時代の中での比較)にはその度合いは比較的小さかったのではないか。
(過去のバブルでは、発生した分野が限定されていることが多かったが、それでも資産クラス間の伝播も存在した。)
そう考えれば、やはり相対的なフェア・バリューを完全に是とするのは難しい。

マークス氏は、超低金利が高いフェア・バリューを正当化しているという。
したがって、金利が変わればすべてが変わり、良くないことが起こると予想する。
それに巻き込まれるのを避けるため、相対価格だけに囚われないようすべきという。

今日犯しうる最大のミスは、金利が低いからといって極めて低い割引率でDCFを行うことだ。・・・
良い絶対リターンを主張しないといけない。
私たちが安全域と呼ぶものを主張しないといけない。

マークス氏はもう1つ、異なる観点から、超低金利時代に注意すべきことを述べている。
それは、低リターンの世界では「高リターンを得る安全で信頼できる術はない」ということだ。
まさにファイナンスの基本である、リスクとリターンのトレードオフであり、フリー・ランチは存在しないということ。
マークス氏は、マドフ事件(サブプライム危機が発覚のきっかけとなった投資詐欺事件)のようなものの再発を警告しているようだ。

すべての投資家が学ぶべき最も重要なことの1つは、いつか『これはあまりにも良すぎる』と言わなければならなくなるということだ。
私がもしも今『確実に高リターンを得る方法を見つけた』と言ったなら、『ハワード、それはうますぎる。世界はそんなものの存在を許さない』と言わないといけない。


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