ハワード・マークス

 

良い投資の意味を理解し新市場が誕生した:ハワード・マークス

Oaktree Capitalのハワード・マークス氏とジャンク債の帝王マイケル・ミルケン氏の対談の第3弾。
1970年代終わりの米ハイイールド市場の誕生の意義を解説している。


もしも私の車を買わないかと尋ねたら、たぶん返事をする前に質問をぶつけてくるだろう。
どんな質問か?
『売値はいくら?』だ。

マークス氏がミルケン氏との対談で、低格付け債市場について話している。
同氏は第1弾にて「良い投資とは良いものを買うことではなくうまく買うこと」と話している。
良い企業の株を高く買うことは必ずしも良い投資ではないだろうし、悪い企業の株を安く買うことは必ずしも悪い投資ではないだろう。
問題は、妥当な価格より安く買うことが重要なのだ。

今回のたとえ話は、米国における低格付け債市場の誕生を説明するものだ。
1970年代終わりまで、米市場は「良い投資」の本質を十分に理解できていなかったのだ。
ミルケン氏、マークス氏らが新たな市場分野を切り開いた。
それが今日の大きな市場に成長したのだ。

Moody’sは価格のいかんにかかわらずB格の債券は良くない投資と言っていた。
この10-40年で市場は、あらゆる資産が良い投資となるほど安くなりうること、ほとんどの投資が悪い投資となるほど高くなりうることを理解した。

「Moody’sによって与えられた『B格は良くない投資』との見方が支配的であったなら、当然ながらB格の債券は発行できなかったろう。
・・・
ハイイールド債産業による革命によって・・・高レバレッジ企業が高レバレッジに由来するリスクを有する債券を発行すれば、それに見合うだけの金利を提供する限りにおいて買っていいということだ。」


米国の低格付けクレジット市場が米経済に果たした役割は大きい。
ハイイールド債市場がなければ、米エネルギー産業がここまでの成長を望めなかったのは明らかだ。
こうした市場なしにシェール開発などありえなかった。
また、既存の投資適格のクレジットが格下げになったいわゆるフォールン・エンジェルに市場があることも大いに経済に役立つ。
もしもこうした投資家層の厚みがなければ、企業は投資適格から転落すると同時に過度に追い込まれてしまうだろう。

あらゆるリスク度合いのあらゆる債券にはそれに見合う金利があり、それを超える金利があるというのは、当たり前のように思える。
しかし、1978年まではこうした考えがなく、みんな成功への道は高品質の資産を買うことと思っていたんだ。

日本ではハイイールド市場が育たない。
金融界は他の産業と同様とにかく価格競争・過当競争が好きだ。
結果、破綻しかけた会社に低利で貸出を続ける銀行が多く存在する。
これが金融システムを危うくする。
もっとも、これは借り手にとっては悪いものではない。

今、日本のハイイールド債の立ち上がりを阻害している1つは、長引く金融緩和なのかもしれない。
先月、消費者金融アイフルが公募で日本初となるハイイールド債を発行した。
その際、利回りが0.99%となったことが話題になった。
確かにジャンク級だが、これはハイイールドなのか。
Bloombergは、この起債が「ハイイールドの意味を再定義した」と表現した。

高リスクの債券が低利回りになることの問題は、デフォルト発生による損失をカバーできなくなる点だ。
利回り1%未満のクレジットが会計上の利益を確保する上で許される損失は全体の1%にも満たない。
市場の安定を保ちたいと考えれば、デフォルトを増やすような変化、例えば利上げなどは選択しにくくなる。
まさに低金利の底なし沼が待っている。


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