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良いインフレならブレーキを踏むな:ハロルド・ジェームズ
2021年6月4日

プリンストン大学のハロルド・ジェームズ教授が、インフレやデフレには良いもの悪いものがあり、良いインフレは抑制せず、必要な社会の変化のトリガーとして歓迎すべきと説いている。


すべてのインフレやデフレが同様に扱われるべきものではない。
技術の改良により起こる価格下落(デフレ)は良いものでありうる。・・・
こうしたものは、大恐慌のようなデフォルトや債務危機につながる物価変動ではない。

ジェームズ教授がProject Syndicateで、すべてのデフレが悪いわけではないと説いている。
同様に、すべてのインフレが悪いわけではないとも書いている。
インフレは金融政策の助けになるほかに、社会を望ましい方向に動かす機能があるという。
教授は「よい物価上昇」の例を挙げている:

  • 半導体の逼迫・高騰は、供給力増強・価格低下につながる。
  • エネルギー価格上昇は一時的で、かつ化石燃料への依存を減らさせる。

繰り返すと、価格に対して、消費者の行動と将来の消費計画に指針を与えるという適切な機能を果たさせるべきだ。

これら現代の現象は、経済回復にブレーキを踏むのを正当化するような種のインフレではない。

ジェームズ教授の議論は、足元でインフレが高まり、FRBが金融政策正常化に傾くかもしれない状況を踏まえたものだ。
良いインフレが進んだ結果CPIが高まったからといって、自動的に金融引き締めを行うべきではないという。
インフレの内容が社会の発展につながるようなものなら、インフレ解消は政策によらず、市場機能に委ねるべきとの趣旨だ。

教授によれば、グローバル化の急加速にはインフレ急騰がつきものだったという。
インフレ急騰が起こると、必ず対処が求められる。
結果、グローバル化など、効率を向上させ物価を低下させる変化が引き起こされる。
ジェームズ教授は、この成果である物価下落を「良いデフレ」と呼んでいる。

デフレやインフレの良し悪しが個別の品目・原因ごとに異なるとすれば、それを全体の平均(物価指数)として丸めてしまうのは不適切だ。
しかし、従来の物価指数から離れるには発想の転換が必要になる。

「こうした考え方の変更には、物価目標が物価安定追及のための中央銀行の主たる武器になった1990-2000年代のコンセンサスからの脱却が必要になる。
この頃、世界中で政府・中央銀行は共通の考え、(CPIで)2%、あるいはおそらく2.5%のインフレが最も望ましいとの考えに達した。」

ジェームズ教授によれば、比較的安定した時期には物価目標が有効だったという。
しかし、パンデミックは人々に急速な行動変化を要求している。
その変化を促す上で、価格メカニズムは最強の道具になるという。
金融政策のために幅広い品目を含む物価指数を高めるよう規定するのでなく、中身を丁寧に見て個別の対応をすべきと説いている。
言い換えれば、金融政策の都合のために価格の持つ貴重な最適化機能を押しつぶしてしまうのでなく、うまく生かすべき道を探せということだろう。

私たちは、共有する原則と優先順位にあった方法で物価を分解しなければいけない。
例えば、化石燃料やタバコのような、反社会的または望ましくない財を計算から除外することを検討すべきだ。
さらに、社会・国家が今日の重要課題にどれだけ効果的に対応しているかを計測する助けになる他の指標が必要だ。


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