自社株買いが増えたワケと法人減税のイミ:ジェレミー・シーゲル

ウォートンの魔術師ことジェレミー・シーゲル教授が、米企業による自社株買い増加の原因について解説している。
一昨年の税制改正を評価しつつも、残された問題点への不満も表明している。


「重要だったのは税率を諸外国と同レベルまで下げ(租税)回避を予防すべきということだった。
その点で大きな前進だ。」

シーゲル教授がウォートン校のラジオ番組で一昨年のトランプ大統領と共和党による税制改正に一定の評価をした。
内外の法人税率の差が米企業に租税回避行動を許していたとの趣旨だ。
その解決法が自国の減税とは悲しい話ではあるが、現実的な方策であったのも事実なのだろう。

この番組では、他校の教授とシーゲル教授の自社株買いについての討論が行われた。
互いに相手をほぼ完全否定するような聞き苦しい展開となっている。
ややあいまいでイデオロギー的な討論相手に対して、徹底的に現実的なシーゲル教授の分析がためになる。
シーゲル教授は、米企業で自社株買いが好まれる理由を2点挙げている。

  • 配当よりキャピタル・ゲインに対して緩い税制
    リターンを配当でなくキャピタル・ゲインで受け取れば税金が少なくて済む。
  • 従業員・経営者の報酬体系
    ストック・オプション等は配当に直接連動するのではなく株価に連動するように設定されている。

教授は、配当と自社株買いの間の有利・付利は税制改正で「中立化」できたはずだといい、そう改正されなかったのが残念と語った。

一昨年の米税制改正が税制をシンプルにしたという評価の声は多い。
その一方で、減税・企業・金持ちの側に強いバイアスが加わっていたのも事実だろう。
(その中で逆のバイアスが加わったのは、民主党の州に不利になるような改正だった。)
税率は概して下げられたし、課税が緩いところは概して温存された。


シーゲル教授は、配当と自社株買いの間に明確なトレードオフが見られると指摘する。

「1980年代、企業は利益の2/3、70-80%を配当として支払っていた。
自社株買いが始まると、配当を減らして自社株買いに置き換えたんだ。
それまでは4%だった配当利回りはわずか2%になった。
自社株買いは2%にあたる。」

これがトレードオフにすぎないなら、企業がリターンの回収をしてもそれが経済活動にプラスになるとは考えにくい。

レパトリで戻ってくる資金が投資に回るなどという考えを私は一度も信じたことがない。
私が考えたそのままのことが起こったんだ。

トランプ政権もブッシュJr.政権も、米企業が海外に留保する利益を回収することに対しレパトリ減税を実施した。
それが国内投資に回るとの触れ込みの話だった。
しかし、このロジックが機能しないのはブッシュJr.政権の失敗で明らかだった。
それでも、トランプ政権はこれを繰り返した。
確信犯なのだ。

シーゲル教授の考えはもう少し現実的だ。
レパトリしてもいいことがないなら、せめて租税回避だけでも防ぎたい。
ならば、米国内の税率を下げるべきだとなる。

シーゲル教授は、企業収益が投資に回らない理由を冷静に分析している。
投資に回らない理由は、投資の必要がないからだという。
そして、最後の投資の対象が自社株買いなのだ。

必要としていたすべてを生産していた。
供給不足がないところに、突然何かに投資しなければならなくなったんだ。


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