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自由市場と創造的破壊を信じている:スタンリー・ドラッケンミラー

スタンリー・ドラッケンミラー氏のBloombergインタビュー第5弾: 投資に臆病になったと漏らす一方、将来を大いに期待する分野について語っている。


「(今年は)喜ぶような成績ではなかったが、先週ちょうど2桁(%)に乗ったところだ。
これは言えなかったのだが、私は高齢であることについて保守的になりすぎている。
ポジションは良かったが、とても臆病だった。
私はそこらへんにしておくよ。」

ドラッケンミラー氏がBloombergで、すっかり臆病になった自分の投資スタイルを自省した。
キャスターから「失うものはないじゃないか」と問われると、自分には失うものがたくさんあると答えている。
同氏の個人資産は46億ドル(約5,000億円)と推計されている。
確かに失うものは大きい。
臆病の原因は年齢なのか、財産なのか。

どうやら、もう1つ大きな理由があるようだ。
ドラッケンミラー氏の関心が、かなり政治や社会問題に向かっているようなのだ。
確かに、今日日、投資家が政治から目を背けるのは自殺行為に近い。
ドラッケンミラー氏は、米市場の弱気相場入りの引き金となりうるきっかけとして、大統領選での左派の勝利とインフレ上昇を上げている。
エリザベス・ウォーレン上院議員など左派が勝利すれば、市場は大きく下げるだろうという。
もっとも、売り方を得意とするドラッケンミラー氏にとっては、それも悪い話ではないようだ。

「市場という観点から言えば、デュケイン(ドラッケンミラー氏のファンド)を研究したコンサルタントはみんなS&P 500と私の投資の間に弱気相場において負の相関があると言っている。
ウォーレン大統領なら私の事業は儲かるが、必ずしも米国にとって良いことではないだろう。」

ドラッケンミラー氏は日頃からトランプ政権のことを批判し軽蔑している。
しかし、彼は共和党支持者だ。
節度ある伝統的な保守層だったのだ。
そのドラッケンミラー氏が、資本主義を批判する人たちの作法に怒っている。

「私は生粋の資本主義者で、自由市場を信じ創造的破壊を信じている。
だから、反資本主義者ではなくメディアのナラティブに少し怒っている。」

ドラッケンミラー氏は、資本主義が格差を拡大しうることを認め、格差拡大に対処すべきとし、富裕層への増税にも賛成している。
しかし、資本主義がこれまで果たしてきた功績が伝えられていないと怒っている。
資本主義が米国や全世界で多くの人を貧困から救ったこと。
資本主義は多くの富豪を生み出したが、それより数桁多い人々を貧困から救い上げたこと。
ドラッケンミラー氏は、これら貧困からの脱出の主因として自由市場モデルの採用を挙げている。

「私は、私が同意できない反対側の議論に反論しているのではない。
私の言うことだけが正しいわけではない。
しかし、事実を捻じ曲げて言うのには反対だ。」

自由市場と創造的破壊を信じる「生粋の資本主義者」は、資本主義を減らすのではく、もっと徹底すべきと公言する。
手始めは目の前に見えている。
自由貿易に反する保護主義はやめるべき。
資本主義の資本配分機能を阻害するマイナス金利は採用すべきでない。
まさに経済上のリベラリズムそのものだ。

ドラッケンミラー氏は、トランプ大統領が再選され、任期中に政策が行き詰まるのを心配する。
そうなれば、反動により資本主義へのアンチテーゼともいうべき政権が誕生するかもしれない。

「彼らの考え方は、億万長者からお金を取り上げれば、低い所得層が向上するというものだ。
世の中はそういうふうにはできていない。
トランプが、貿易交渉で中国を負かせば米国が勝つというゼロサム・ゲームと同じだ。
実際には両者が負けることになり、経済も同じなんだ。」

このあたりは典型的な新自由主義者の主張のように聞こえる。
左派の人たちも言いたいだろう。
そうやってきたのにうまくいかなかったじゃないか、と。

しかし、米国という社会は不思議な社会だ。
格差が大きいのに、お粗末な社会保障制度しか持たない遅れた国家だ。
その一方で、経済的に成功した個人が国家の穴を埋める役割を果たしている。
ドラッケンミラー氏も、新自由主義をぶつばかりなら耳を貸す価値もないかもしれない。
しかし、この富豪は、政府を通さず、社会に直接富を還元している。

フィランソロピーには全く臆病じゃないし、米国でのフィランソロピーの将来に大きく期待している。
・・・
民間セクターを用い社会起業家によるイノベーションを推奨し、もしも成功した場合にはそこにお金をつけることを考えている。
ミッチ・マコーネル共和党上院院内総務やナンシー・ペロシ下院議長に献金するよりはるかにワクワクする。
ジェフ・カナダや他の団体や社会起業家に寄付した方がはるかにいい。

小さな政府を望む人たちは、おそらく国家を信頼していないのであろう。
だから、国に再配分を任さず、自分で再配分を行う。
確かに、政治家や官僚の中には、公費で支持者に桜を見せるような人もいるようだから、気持ちはわからなくもない。


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