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自己実現的な景気後退予想:ロバート・シラー
2019年3月9日

ロバート・シラー教授が、ドナルド・トランプ大統領が経済・市場に及ぼした心理的効果について解説した。
しかし、それも長くは続かないだろうと示唆した。


過去数年、かなり明白なトランプ効果があったと思う。
彼は豪奢な生活のモデルであり、企業を助け、企業のための幅広い公的支援を行い、所得税を減税した。
これ以上、何を望むのか?

シラー教授がCNBCで行動経済学者らしい観点からトランプ政権と米経済の関係を語った。
もちろん、トランプ大統領と共和党の経済政策は米経済を刺激する現実的効果があった。
しかし、それに加えて、トランプ大統領が経済・市場の心理に働きかけることで発生した効果もあったのだ。
なぜ、政策そのものだけでなく、心理が経済・市場を動かすのか。

「(ナラティブに動かされるのは)人間のサガなんだ。
人間の知能とは、物語を持つと賢くなるんだ。
そして物語を欲しがるんだ。
出来事の連続を求め、そこにモラルを求めるんだ。」

世界はさまざまな情報で満ちている。
この情報の海に対して、人間の能力など無に等しい。
そこに、ナラティブ≒物語の出番がある。

「無数の経済統計が存在し、計算・換算・操作する方法も無数にある。
それをすべて把握することは不可能だ。
だから、物語を聞かなければいけなくなる。
ドナルドJ.トランプのような話が巧い人たちは-トランプは優れたストーリー・テラーだ-米経済を押し上げる傾向がある。」

確かにトランプ効果は経済を押し上げたのかもしれない。
しかし、それにも限界がある。
ファンダメンタルズがついてこなかったり、効果の源が権力を失ったり、物語を信じられない強い理由が現れたりすれば、心理的効果は逆回転を始める。

現在の米市場は、迫りくる景気後退の影におびえ力を失いつつある。
トランプ効果でも打ち消せない重い事実が人々の脳裏から離れない。
6月で米経済の拡大が10年に達する点だ。

たくさんの人がそれを気にしていて、まもなく反転すると考えている。
私もそうなるような気がするんだ。
みんながそう考えれば、それが(景気後退を)現実のものとしてしまうんだ。

人々が景気後退の到来を心配することで、自己実現的に景気を後退させてしまうのである。
シラー教授は今年中の景気後退入り確率を半々ぐらいと話した。

シラー教授は財政悪化についても見解を求められている。
財政悪化が歴史的水準なのに、それに反対する人が多くないことに懸念を示した。
右も左も財政を拡大したい人たちが増えたためだ。

アレクサンドリア・オカシオコルテス(下院議員)のようにトランプを批判する人が(政府債務拡大を)批判していない。
いわゆるニュー・マネタリー・セオリー(MMT)があり、財政赤字でも大丈夫だと考えている。
だからそれが争点にならない。
大衆は今のところ大丈夫と考えているが、彼らの脳裏では確信はないのだと思う。

米国は財政政策について着々と日本化しているように見える。
あとは金融政策だが、シラー教授の景気後退時期予想を聞く限り、その日本化もさほど遠くないのだろう。
米国がこれまで日本に対ししたり顔でアドバイスしてきたそのことを、彼ら自身が実行するのかとても楽しみではないか。


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