ジョセフ・スティグリッツ

 

自己中心が招いた自滅:ジョセフ・スティグリッツ

ジョセフ・スティグリッツ教授が、市場経済のルールを再び書き換えるべきと唱えている。
現在の経済停滞と格差拡大の一因として、個々人の自己中心的な考え・行動を挙げている。


みんな他人の勘定を支払うのがいやなのはわかってる。
時として自己中心的な考えが広まり、自己中心的な人さえも不幸にしてしまうことがある。

皮肉屋のスティグリッツ教授がUBSのビデオでにやりと笑った。
頑固に正義を追い求める硬骨漢は、新自由主義の流れが自滅を生んだと匂わせている。
しかし、それは少なくとも社会全体にとってはよいものとは言えなかったようだ。

「市場経済のルールを書き換えようという試みがなされてきた。
そこでは、多数の費用によって少数を利し、同時に米経済の生産性を害し、それが短期的思考と経済・人財・技術への投資不足につながり、生産性向上を鈍化させた。
とても率直に言って、大惨事だ。」

スティグリッツ教授は、こうしたルールの書き換えが誤りだったと考えている。
今それをもう一度「もっと平等になるように」書き換えるべきと主張する。

「労働者が企業の力を制限するための交渉上の権利を強化し、よりよい企業統治を生み出す。
GDPの2.5%から8%にまで成長した金融セクターの力を制限する。
米経済全体の生産性が向上したとの証拠は存在せず、不安定と格差が拡大したとの証拠はあり余るほどある。」


スティグリッツ教授は、悪化してきた格差拡大を逆回転させるには部門間のパワー・バランスを矯正する必要があると考えている。
そして、損得がアンバランスなのは部門間だけの話ではない。

「損得の世代間での移転が増大してきた。
言い換えれば、金持ちの子どもたちがそれ以外の人たちに比べてとても得をしている。」

富もそうだが、チャンスの格差も広がっている。
これは、アメリカン・ドリームの礎を崩しかねない変化だ。
最近も、富裕層による大量の大学入試不正が検挙され、米社会を悲しませた。

日本の場合、得をしているのは金持ちと正社員とシニア層と考えられている。
金持ちはともかく、弱さも併せ持つ正社員・シニア層が批判される側に回るのも悲劇だ。

こんな大きな問題に対して容易な解決策があろうはずもない。
考えれば考えるほど陰鬱な気持ちになってくる。
しかし、スティグリッツ教授の心の強さはやはり飛び抜けている。
厳しい現実を語りながらも、理想を忘れることはない。

特効薬はなく、一晩で解決するようなものではない。
背景にある原因を診断し、それを反映させた包括的な政策が必要だ。
そうした包括的政策こそが、経済成長を高め格差を縮小してくれるはずだ。


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