ラグラム・ラジャン シカゴ大学教授は、主要国での中央銀行デジタル通貨(CBDC)導入が途上国経済に及ぼす影響について解説している。
それ(金融包摂)はありうる。
同時に懸念もある。
貧しい国でデジタル・ドルやデジタル人民元があまりにも手軽に扱えるようになれば・・・今日ドル化と言われていることが起こる可能性がある。
ラジャン教授がBloombergで、主要国のCBDCが途上国に及ぼす影響について話した。
銀行取引さえできないような環境に置かれた途上国の国民がデジタル・ドルにアクセスできるようになるメリットは大きい。
預金をはじめとして様々な金融サービスの恩恵を受ける入り口となりうる。
その一方で、心配もないわけではない。
例えばドルという(比較的)強く安定した通貨を事実上保有できるなら、自国通貨は事実上放棄され、ドルがデファクトの決済手段になりかねない。
もちろん、途上国ではデジタル化の前から見られた現象だが、CBDCはこれに拍車をかけることになるだろう。
これが意味するのは、その国が金融政策の主権を失い、他国が持つようになるということだ。
結果、経済成長のためのツールが減ってしまう。
その国の経済が完全に米経済と同期するなら、この問題はそう大きくない。
両国が同時に不況になり、金融緩和が行われるだろうからだ。
しかし、そこにズレがあれば、途上国が不況の時に金融引き締めが行われるといったミスマッチが起こる。
これは、多かれ少なかれ途上国でこれまでも起こってきたことであり、CBDCは便利であるがゆえにそれを増幅しかねない。
もちろん、ドル化のような現象については地政学的な観点からも問題点が指摘されている。
かつてIMFチーフエコノミストやインドの中央銀行総裁を歴任したラジャン教授は、途上国が自国通貨を放棄することには当然否定的だ。
ただし、皮肉っぽく例外を付け加えている。
これが、途上国だけの話のようには聞こえないから不思議だ。
貧しかったり、政策が効率的でない国で通貨を放棄したがる国があるかもしれないが、長期的には、それは国益にとって最良のものではないだろう。
もちろん、政策が完全に不適切な場合は除くけどね。