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脱グローバル化で傷つくのはドルとドル資産:ケネス・ロゴフ
2020年6月11日

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授が、米政府が進める閉鎖的な通商政策について、米経済を害するものと批判している。


脱グローバル化が行き過ぎれば、どの国も苦しむことになる。

ロゴフ教授がProject Syndicateで、米国の通商政策について遠まわしに批判している。
道理をわきまえる人なら、脱グローバル化が経済的損失につながることはわかっている。
今さらこの当たり前のことを教授が繰り返したかったのはなぜなのか。
それは、視野の狭い議論を排したところにあるようだ。

トマ・ピケティはその2014年のベストセラー『21世紀の資本』で、所得と富の格差拡大が資本主義の失敗の証拠だと書いた。
でも、誰にとっての失敗だったのか?
先進国経済の外-世界の人口の86%が住んでいる-では、グローバル資本主義が数十億の人たちを絶望的な貧困から救いあげてきた。
したがって、間違いなく脱グローバル化は人々を助けるより害するリスクがある。

グローバル化と資本主義は、先進国だけを見れば、労働者を途上国の労働者と競わせることで貧しくし、結果得られる富を富裕層に還元したことで格差を拡大したのかもしれない。
しかし、世界全体で見れば、途上国を引き上げることで格差を小さくする効果もあった。
それが逆転を始めれば、先進国の労働者は息をつくことができるのかもしれないが、途上国は大きな打撃を受けるだろう。
ここまでの議論なら、自己中心的でポピュリズムに害された先進国は、脱グローバル化を選ぶかもしれない。

ロゴフ教授は、米国こそ脱グローバル化によって失うものが大きいと警告する。

現在米政府・米企業が他国よりはるかに多く借り入れるのを可能にしているプラス要因は、ドルがシステムの中心的役割を果たしていることにある。
幅広い経済モデルが示すのは、関税と貿易摩擦が増えるにしたがって、金融のグローバル化が少なくとも比例して失われるということだ。
これは多国籍企業の利益と株式市場の富の両方が急落するだけでなく・・・外国からの米債務の需要の大きな減少を意味するだろう。

ドルが主要準備通貨だからこそ、みんな米ドルやドル資産を持とうと考える。
主要準備通貨たる一因は、ドルが世界の貿易の決済に用いられるからであり、米国がさかんに諸外国と貿易を行っているからだ。
米国が諸外国との貿易にブレーキを踏むようなことをすれば、ドルやドル資産への需要に悪影響を及ぼしかねない。

ロゴフ教授は、コロナ・ショック対策もあり膨張を続ける財政赤字にも触れ、米国が借金を増やそうとしている今、ドルやドル資産への需要を減らすべきでないと警告する。
さらに、コロナ・ショックによる供給制約を考慮すると、物価・金利を上昇方向に向かわせかねないとしている。

たとえ米国が世界の他の国々に及ぼす脱グローバル化の効果について見て見ぬふりをするにしても、米政治家の何人かが縮小を狙う広範な通商・金融システムに現在のドル資産に対する豊富な需要が依存していることを覚えておくべきだ。


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