緩和策を講じないのが正解:ヌリエル・ルービニ

世界金融危機を予想し《終末博士》とも呼ばれるヌリエル・ルービニ ニューヨーク大学教授が、お家芸の不吉な予想を語っている。
立て板に水のごとく悪い材料を列挙するさまは、まさに圧巻だ。


来年までに景気後退となる確率は25%より高いと考えている。

ルービニ教授がBloombergで、レイ・ダリオ氏による景気後退予想に同調する発言をした。
教授はすでにいくつかその兆しが見えていると列挙する:
世界経済の鈍化、製造業・外国と関連するセクター・輸出入できる財のセクターでの縮小、設備投資の低下など。
もちろん教授が主因と指摘したのは米国が仕掛ける貿易戦争だ。
米国がこのまま関税引き上げに突き進むなら、現在の米経済の支えとなっている消費にも悪影響が及び、景気後退の引き金を引くだろうという。

ルービニ教授は、市場がリスク要因を適切に織り込んでいないと指摘する。

市場はまだ自己満足な状態にあり、世界経済にはあらゆる形の負の供給ショックが存在する。

教授は負の供給ショックにつながるイベントを列挙した:
米中間の通貨戦争・技術問題・冷戦の恐れ、ハードBrexit、米・イラン対立など。
これら負の供給ショックが発現・継続すれば、成長が鈍化し、インフレが上昇しかねないという。
金融・財政刺激策が講じられるが、負の供給ショックが成長の足を引っ張るだろうという。


正しい対応策は金融・財政刺激策を講じない、つまり緩和しないことだ。
緩和策をとれば最後には財政赤字の拡大に歯止めがきかなくなり、インフレが上昇する。

ルービニ教授は、Brexitや貿易摩擦などを続けるなら、それが恒久的な負の供給ショックとなり「潜在成長率が低下するという事実を受け入れる」べきと主張している。
景気のいいことをしゃべり続けなければいけない職業の人間にはなかなか受け入れにくい話だろう。
しかし(やや悲観的すぎるようには感じられるものの)これが現実的・冷静な見方なのかもしれない。

世界金融危機前の金融市場との比較を尋ねられると、ルービニ教授は淡々と《過剰》の所在の違いを解説した。
危機前は、銀行システム・レバレッジ・家計に問題があった。
現在は超低金利に助長されシャドウ・バンキングと企業セクター(レバレッジド・ローン、CLO、ハイイールド、投資適格債の格下げ可能性)に存在するという。

「これまでは長短金利が低いからよかったが、世界経済が後退するリスクがあるなら、信用スプレッドが拡大する。
2015-16年や昨年にも見られたことだ。・・・
そうしたショックがあれば、それが企業債務の転換点となる可能性がある。」

仮にそうなれば、市場はまず凍り付き、スプレッドが拡大、投資適格債・ハイイールド・CLOでデフォルトが増え、クレジット・クランチに発展し、保証の状況が悪化し、通貨戦争に至る可能性もあるという。
次の危機がリーマン危機より悲惨なものになるかどうかは、どの負の供給ショックが継続するかによるという。

世界経済は統合とグローバリゼーションから脱グローバリゼーションとバルカン化へと大きなレジーム変化を迎えつつある。
人々はこれを過小評価しており、それが見えないリスクとなっている。


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