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継続的債務整理住宅ローンが危機を防ぐ:ロバート・シラー
2019年4月3日

資産価格の実証的研究で2013年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が、景気後退期の住宅・金融市場の混乱を防ぐための住宅ローン商品を提案している。
この商品を導入すると社会厚生が向上することがシミュレーションで確かめられたのだという。


「Continuous Workout Mortgage(CWM、シラー, 2008年)は2つの要素を備えるローン商品だ。
固定金利の住宅ローンとエクイティがマイナスになることへの保険である。」

シラー教授が学術雑誌への寄稿で、新たなタイプの住宅ローン商品を提案している。
サブプライム/リーマン危機への反省から、景気後退期においても破綻のスパイラルが起こらないよう工夫した商品だ。
CWMを訳すなら、継続的債務整理住宅ローンとでもなろうか。
住宅価格の不測の下落に対してあらかじめ保険となる取り決めを用意しておこうというものだ。

サブプライム/リーマン危機においてはローンの借り手と出し手の両方に悲劇が襲った。
サブプライム・ローンと呼ばれる融資基準の緩いローンは金利上昇・住宅価格下落とともに次々と延滞に陥っていく。
住宅は差し押さえられ、借り手は家を失い、借金だけが残るケースも多かった。
一方、金融機関や投資家の側でも損失が積み上がり、米金融界はシステミック・リスク発現の瀬戸際に立たされた。

CWMは、物価上昇率に連動する住宅ローンPrice-Level Adjusted Mortgages(PLAM)の考えを発展させ、シラー教授が提唱したものだ。
PLAMが返済を幅広い消費者物価指数に連動させるのに対し、CWMではよりフォーカスした住宅価格指数に連動させる。

より重要なのは、ローン返済が住宅価格に連動し、エクイティがマイナスになるのを防ぐために下方に修正される点だ。

ここで言うエクイティとは、住宅価格からローン残高を差し引いた金額と考えればよい。
その住宅保有が債務超過になると、破綻を回避するためローン返済額が減額される。
もちろん、この保険を得るのにはコストもかかる。
当初の返済額に保険のコストが上乗せされているのだ。
何事もなければコスト高ということになるが、もしもの時に破綻するリスクを取るよりましという考えも十分妥当だろう。
実際、同論文ではCWM組成によって社会厚生が大きく向上すると結論付けている。
ただし、シラー教授は発明家であると同時に、あくまで現実主義者だ。

測定された社会厚生はプラスであり、シミュレーションの結果は勇気を与えるものだ。
しかし、私たちはCWMをすべての人には提唱しない。
いかなる保険もそうであるように、CWMはコスト高になりうる。
将来がいい時期しかない場合、付随する保険料のためにCWMは結果的に固定金利住宅ローンよりコスト高になってしまう。

銀行員は顧客を説得するのがたいへんかもしれない。
貧乏な借主、ぎりぎりのローン案件ほどコストを嫌ってCWMを嫌うかもしれないからだ。
顧客を説得するのは何か。
それはサブプライム危機を生んだ時代を思い出せばいい。
借主は多少高い金利でも喜んで受け入れていた。
なぜか。
住宅市場のロング/ショート・スプレッドが大きかったからだ。
残念ながら、今このスプレッドはマイナス圏にある。


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