結局は米金利もマイナス圏へ:ケネス・ロゴフ

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授が、米中の経済状況、マイナス利回り・マイナス金利政策についてコメントした。
米国においてもそう遠くないうちに金利がマイナスに沈む可能性があるのだという。


景気後退が長い間なかったこと、典型的な期間、ある年に景気後退が起こる確率が15-17%であることをを考えれば、確かに確率はおそらくある程度高まっているだろう。
しかし、今後2年の確率は明らかに50:50より下だ。

ロゴフ教授がCNBCで米経済について話した。
教授によれば、米経済のファンダメンタルズは良好だが、一方で政策の不確実性が大きくなっているという。
それが企業の信頼感を損ない、投資を鈍化させており、米経済にとって「圧倒的で最大のマイナス材料」になっているという。
暗にトランプ政権の不安定な政策運営を批判している。

ロゴフ教授は、こうした不確実性の高まった環境では景気が急激に悪化する可能性も認めている。
しかし、市場を一時パニックに陥れたイールド・カーブ長短逆転については重視していないという。

これは長期金利が下降トレンドにあったためで、市場やFRBの政策がそれに順応してきたものだ。
先週はパニックになり、人々はまだとても神経質だ。
しかし、伝統的にそうだったような(先行)指標ではない。

イールド・カーブの長短逆転は過去かなり確度の高い景気後退の先行指標だった。
しかし、今回については《今回は違う》と言う人が多い。
その1つの根拠は、QEによって特に長期側の需給が歪められているというものだ。
もはや長期金利は経済の実勢を反映していないという趣旨である。
バイロン・ウィーン氏など市場よりの人が口にすることが多い。

一方、ロゴフ教授はそもそもQEの効果をほとんど信じていない節がある。
かねてからQEは手品のトリックにすぎないと言い切ってきた。
(実はこれはQEの元祖、ベン・バーナンキFRB議長(当時)も言っていたことだ。)
量的緩和政策とは期待に働きかけるチャネルを除くと、見せ金によるトリックにすぎない。
QEという手段を買っていないなら、長期金利が歪められているという見方にもなりにくいのだろう。
ロゴフ教授が考える低い長期金利の原因はシンプルだ。


長いところの金利はさらに下がるかもしれない。
みんなが不吉な前兆を感じ取るからだ。

ロゴフ教授は、米経済のファンダメンタルズに太鼓判を押す一方、中国には弱気な見方を続けている。

「貿易戦争は中国にとても厳しい打撃を与えている。
多くの中国の貿易相手国に損害を及ぼしている。
・・・
今後10年は過去10年よりも大幅に緩慢な成長を予想しているのだろう。」

ロゴフ教授は従前から、米中摩擦を別にしても中国経済が趨勢的な低成長に陥ると予想してきた。

ロゴフ教授は、世界中に広まるマイナス利回りについて尋ねられると、低インフレを反映したものだと話している。

「米国は実質金利なら長い間マイナスだった。
今はとても低いインフレの時代だ。
インフレが4%で利回りが3%の場合にも同じ質問ができるはず。」

ロゴフ教授が言いたいのは、名目のマイナス金利とはそれほど特殊なものではないということだ。
名目金利がプラスでも、実はインフレを差し引いた実質金利がマイナスになっていることはままある。
しかし、多くの人がそれに気づくわけではない。
低インフレになると名目金利までもマイナスになるからみんな騒ぎ出すだけだ。

ロゴフ教授は今後の見通しを述べている。

「今後10-15年もしもこの低い実質長期金利が続くなら、米国を含むいたる国でマイナス金利がしばしば見られることになろう。
私は(原因が)QEだとは思わない。
これは世界的な現象だ。」

一方、金融政策としてのマイナス金利政策についてもロゴフ教授はコメントしている。
日欧は現行の効果に乏しいマイナス金利政策が効果を発揮するよう工夫する必要があるという。
また、米国でも何らかのマイナス金利政策が実施されるだろうという。
しかし、その前に現金の呪いを解くなど、政府による環境整備が必要になるという。

そう遠くなく起こるのかもしれない。
しかし、米国ではFRBではなく政府が行動しないといけない。
税制改正、規制改正、特にマイナス金利の深掘りのためのタンス預金対策だ。
これは長い話で、未来のことだろう。


 - 海外経済 , , ,